cor について3

 

 2022/04/24 開催の春 M3 にて頒布した MIRINN 1st Album "polaris" 収録の楽曲『cor』についての話をします。今回はミックスまわりについてです。めちゃくちゃに得意というわけでもないので自分が書いても……という気持ちがなくはないものの、M3 に向けた楽曲ということでいつも以上に頑張ったのでまあ書き残しておくかという感じです。完全にただの身内向け記事なので適当なことを書きまくるかもしれませんが、大目に見てください。

 cor / MIRINN は以下のリンクから試聴できます。

mirinn.bandcamp.com

 前回の記事(作編曲まわりの話)。

kazuha1221.hatenablog.com

 前回の記事(作詞まわりの話)。

kazuha1221.hatenablog.com

 

 初手、ミックスを行う上での本質情報を書いておきます。

  • ちゃんと寝る。
  • ちゃんと休憩する。
  • リファレンスを用意する。
  • (可能なら)他の人に聴いてもらう。

 上から順に本質度が高いです。

 睡眠時間が足りていないと聞こえ方が変になることがあり、その状態でミックスをするとすべてが破滅するため、なのでどんなデスマだとしても計画的に睡眠を挟んだほうがよいです(仮眠を取るか取らないかでも体感それなりに変わってくる感じ)。また、ずっと同じ曲(製作途中の曲)を聴いていると次第に粗がみえなくなってくる(「なんか良い感じじゃね?」としか思えなくなる)こともあるので、適宜休憩を挟むようにすると良いです。座りっぱなしも身体によくないし。

 リファレンス(お手本)を用意しましょう。いま作っている楽曲と楽器構成の似ている曲で、かつ「こういう方向へもっていきたいな~」となる曲をいくつかリストアップし、wav ファイルとして手元に置いておくとよいです。それと同時にアナライザーも。Free だと Voxengo SPAN なんかが有名で、有料版なら ADPTR AUDIO Metric AB なんかです。自分はこの二つを併用しています。

 ミックス激うま人間なら多分そんなことないと思うんですが、「ミックスわかんないよ~」という試行錯誤の段階ではリファレンスを用意しても迷走しがちというのがあり、なので客観的な第三者の意見を募るのはかなり効果的だと思います(とはいえ、訊く相手は少し選んだほうがいいです(知識の有無ではなく、意見を述べる際に言葉を選べない人を相手に選ぶとメンタルがアレになる))。自分も今回の制作では、サークル内外の数人にお願いしてときどき意見をもらっていました。あの堀江晶太さんも「自分の感覚ではローが出すぎたり足りなかったりするので、低音域は必ず PA に確認をとっている」って言ってますしね(ミックスの話ではない)

 

 というわけで、前置きも終わったので以降が本編です。

 注意書きですが、バンドサウンドを作る上での話しかしない(できない)ので、以降に書かれてあることは全部バンドサウンドにしか適用できないと思ってください。

 

 

Reference

 なにはともあれ、まずはリファレンスを用意します。できれば wav や mp3 のデータとして手元に置いておいたほうがいいです(そのほうが都合がいいので)

open.spotify.com

 楽曲の構成要素から選定していくとよいです。『cor』はこんな感じでした。

 

  • ピアノ:一曲を通してずっと鳴っている。ピアノを聴かせたい気持ちはあるが、リードギターも同じぐらい聴かせたいので、どちらか一方を主役に据えるような感じにはしたくない。
  • バッキングギター:基本的にパワーコード。カッティングの入るところはこっちを聴かせたい。
  • リードギター:ずっとリフを弾いている。サビと C メロ以外は煌びやかさを演出する(どちらかといえば脇役的な)役割で、でもサビと C メロはちゃんと聴かせたい。
  • ドラム:割とシンプルなロック調。四つ打ちになるラストなんかはちゃんとシンバルを聴かせたい感じ。
  • ベース:あんまり考えなかった(どの曲にでもいるし)
  • ボーカル:これもあんまり考えなかった。本当なら性別くらいは統一したほうがいいと思うし、声質なんかで選んでもいいと思う(音域で選ぶのもアリな気がする)

 

 という辺りから「リファレンスにするならピアノロックだな~」「でもピアノとギターが良い感じに絡み合ってるやつのがいいな」「ところで、A メロの落ち着いてるところとか、あるいは間奏のちょっと激しくなるところなんかは、それぞれちゃんとリファレンスを置いておきたいな」という気持ちになり。

 そういうわけでピアノロック枠として『キリフダ / PENGUIN RESEARCH、落ち着き枠としてシリウス / BUMP OF CHICKEN、激しめ枠として『HATENA / PENGUIN RESEARCHが採用されました(他にもいくつか)。作業中に何度も聴くことになるので、自分の好きな曲から選んだほうがいいです。

 

 リファレンスをいくつか用意したら、ミックスへ取り掛かる前に楽器隊のチェックを行うとよいです。というのも、ミックスのうまくいかない原因が編曲にあるというケースが結構数あり、たとえばそもそもの音作りがイメージと違うとか、帯域を担当する音が足りていないとか。その辺りをリファレンスと聞き比べつつ先んじて調整しておくと、あとで地獄をみずに済みます( n 敗)。たとえば BUMP の曲だと裏でずっとシンセパッドが鳴っていたりしますね(コード感と帯域の補強?)

 

 その辺りの確認も終わったらいよいよ作業開始です。2 サビ頭を例にとって話を進めます(音量注意)

 

 普段作りこむ順に紹介していきます。

 

 

Drums

※「 2 サビ頭を例にとって」と言った矢先にアレですが、Drums だけ後奏を例に話しています(どうして?)

 完全に自己流ですが、まずは Drums と Bass の 2 つしか入れていない状態でそれなりに聞こえるように整えていきます。

 打ち込みの画面はこんな感じです。このまま書き出すと kick, snare, hihat, toms, cymbals なんかが全部ひとまとまりになった状態の wav ファイルが生成されます(当たり前)

 ところで、kick に対して行いたい処理と hihat に対して行いたい処理は別物なわけで、なのでパラアウト(=個別書き出し)して別々に処理できるようにします。製作段階からミキサーを使って実行する方法もあると思うんですが、自分は制作とミックスとを完全に分断して作業することが多いので、それぞれの構成音を(他の楽器隊をミュートするなどして)wav で書き出して使います。こんな感じ。

上から順に「ambience」「comp_snare」「comp_snare以外」「hihat」「kick」「overhead」「snare」「tom」です。ambience はいわゆる部屋鳴りのことです。comp_xxx は自分の使っている superior drummer 3 という音源に特有のアレかもしれないので割愛(他のドラム音源にもあるのかも)。overhead はオーバーヘッドマイクですね。金物やスネアの表面の音なんかが入ってたりします。

※これはマジで注意なんですが、パラアウトの手順をミスると元々入っていたはずの音が抜け落ちてペラペラになったりします( 1 敗)

 

 パラアウトした wav データをそれぞれ処理していきます。kick を基準にして、まず全体の音量感を整えるといいと思います(tips:金物の調整をするときは音量を下げて聴くといい)

 だいたいのバランスが取れてきたら EQ やら comp やらで細かいところをしばいていきます。superior drummer は音源内に EQ, comp の類が一式揃っているということもあり、各楽器についてはその中のもので済ませてしまうことが自分は多いです(なのでパラアウトした時点でだいたいできている)

 まず確認するのは kick のローです。

 これは SPAN という無料のアナライザーの画面です。横軸が Hz、縦軸が db。SPAN はそのままだとなんか変な感じの傾斜が掛かっているので、他のアナライザーと併用するのであれば slope の値を 2.81 くらいに変更したほうがいいです(左上にある小さい歯車マークから設定可能)slope の値で y 座標が上下するので、作業中は絶対に変更しないほうがいいです。

 

 上の画像は最終ミックスを終えてマスタリングを施した後の『cor』をアナライザーへ通したものです。キックのローを調整するときにみるのは 20Hz-60Hz あたり(アナライザーの右端)です。

 実際にアナライザーを通してみれば分かるのですが、キックが鳴った瞬間に該当部分の周波数がぐっと持ち上がり、50Hz 辺りを頂点にもつ三角形がみえると思います。リファレンスと見比べて「持ち上がった瞬間に 20Hz(右端)が触れる db(y座標)を EQ 等で調整します(適宜カットする)。自分がリファレンスにしていた『キリフダ / PENGUIN RESEARCH『HATENA / PENGUIN RESEARCHでは 20Hz の y 座標が -51db から -48db くらいに収まっていたので、『cor』でもその辺りへ収まるように( superior drummer 3 内の)EQ を調整しました。曲調にも依りますが、だいたいのバンドサウンドはここの帯域が -51db から -45db の間に収まっている気がします。50Hz-60Hz についても同様に調整します。

※tom が鳴ったり、kick を八分音符で連打していたりすると上で設定した値を越えることが多々あるのですが、それは問題ないです(ところで tom のローも調整したほうがいいので、その場合はリファレンスで tom をしばいている場所を探して、そこのアナライザーをみる)

 

 ついでに snare も調整しておきます。snare は音の重心をどの辺りへ持っていきたいかを考えながら調整することが多いです。抜ける感じがほしいなら 100Hz - 200Hz 辺りの重心と、あと 500Hz 前後の重い部分を少し削ったほうが恐らくはよく、今回はそんな感じの適度に抜け感のある snare にしたかったのでこんな感じの EQ を掛けています。

 

 kick, snare, tom の調整が終わったら bus(=共通のミキサー)へ通します。ついでに ambient(部屋鳴り)なんかも同じところへ通します(入ってるの、特に kick と snare の鳴りだし)(嘘で、シンバルも結構入ってる)

 

 Bus で何をするかについては一旦放置し、次に高音域を確認します。これはサビで比較するといいかもです(サビは金物がうるさいがちなので)

 4kHz - 20kHz をみます。ここが出すぎているとめちゃくちゃ耳に痛い曲になり(ということを『cor』のミックス中に某人から指摘され、自分も今回めちゃくちゃ向き合った部分でした)、ところでこの辺りは(バンドサウンドなら)Drums の金物が支配的な帯域なので金物類を調整します。アナライザーを通してみると、リファレンスにした曲では該当の帯域は -42db をほんの少し突き出るくらいに抑えられていたので、『cor』でもそういう風に持っていきました(画像の通り、割といい感じに調整できた)

 ここは Drums(金物)にとっておいしい帯域でもあるのであまり変な加工をしたくなく、なので EQ はざっくり形を作る程度の緩めに留め、マルチバンドコンプで高域をバシバシ叩く方針でいきました。マルチバンドコンプって何やねんという話は割愛(収拾がつかなくなるし、自分もよく知らないので)

 

 これも調整が終わったら金物類を全部まとめて( kick なんかを通したのとは別の)bus へ通します。

 

 bus では主にコンプを使っていい感じにまとまりを出したり、あとは全体を聴きながら EQ で最後の調整をしたりします。こんな感じ。

 上から順に「まとまりを出すやつ」→「まとまりを出すやつ2」→「音量感出すやつ」→「帯域整えるやつ」→「帯域整えるやつ2」です。Drums やパーカッションのようなアタックが速い楽器には FET comp が良いってよく言われますね(上画像の VLA-FET がそれ)。EQ を二つ挿しているのは機能性の問題です。VEQ-1P を掛けたときの音の変わり方が割と好きで、ここでの Fruity parametric EQ はざっくりとしたカットにしか使っていません。VLA-FET, VEQ-1P は Black Rooster Audio のものを使っています。

 

 最後に kick 類の bus と金物類の bus とをさらに bus へ通して、マジ気持ち程度のバスコンプを薄らかけて完成です。

 comp に通したので単に音が大きくなっているのはそうなんですが、他にも諸々、上で言ったようなことが変わっていたりいなかったりします。

 

 

Bass

 先述の通り、Drums と Bass だけの状態でもそれなりに聴こえるのを目指してミックスをすることが多いので、次はこいつです。処理前の音がこれ。

 MIRINN の Bass 担当 imanishi 君から送られてきたデータそのままです(嘘で、最後の刻みは自分が勝手に入れた)。向こうである程度の音作りをしてくれていたので、この時点で結構音が良いですね。あとは他の楽器隊(主に Drums )とのバランスみつつ調整していきます。

 Bass でみるのは 60Hz - 200Hz あたりです。

 例によって、上の画像は完成版の『cor』の音源をアナライザーに通したものです。60Hz - 100Hz の間に 1 つ、100Hz - 200Hz の間に 1 つ、それぞれ山のようなものがあるのが分かると思うんですが、リファレンスの(というか堀江晶太さんの)Bass の鳴りを調べてみるとこんな感じの形になっていることが多く。そして自分はそういう音がかなり好みということも分かっていたので、今回の楽曲ではそんな感じの方向へ寄せることにしました。たとえば『キリフダ / PENGUIN RESEARCHのサビはこんな感じですね。

「たしかに山が 2 つあるな~」って感じですね。もちろん、どの弦のどのフレットを弾いているかなどによって周波数は変化するので、常にこの形になっているわけではないのですが、ルート弾きなんかになったときにところどころこういった形がみえるように調整していこうというモチベーションで EQ をバシバシ掛けていった記憶があります。

 それともう一つ重要な気がしているのが、Bass の帯域に現れる山の最大値( y 座標)をリファレンスにあわせることです。なんていうか、ここに気をつけてさえいれば Bass の出すぎによるモコモコ感みたいなのはかなり回避できるような気がします(本当に?)。具体的には、『キリフダ / PENGUIN RESEARCHでは 100Hz - 200Hz に出てくる山は -24db を絶対に越えず、基本的には -30db の前後をふらふらしているので、『cor』もそういう風になるように EQ やら何やらを設定しています。

 という事情で、こういう極端な設定をしがち。

 50Hz 以下は kick のローに任せたいので、Bass のほうでは割とカットしています。送られてきた wav は 60Hz 辺りの出方がちょっと弱かった気がしたのでブースト。逆に 5kHz 辺りにあるピッキング時の音はちょっとうるさかったので削り。あとは 900Hz 辺りをちょっとだけ持ち上げています。これは堀江晶太' bass を聴いた感じ、「あのベースのゴリゴリ感ってここら辺の帯域が肝なのでは?」という気持ちになったためです。

 というのをめちゃくちゃにやっています。

 上の 6 つは全部 EQ です。世の中には EQ を 6 つも挿す人がいるらしい。音作り用に先んじて挿したものと、他の楽器隊( Guitar,Vocal,... )との兼ね合いで後から挿したものとの 2 種類があるために、こんな馬鹿みたいな数になっています。

 SUPERCHARGER は Native Instruments のやつで、区分的にはコンプレッサーらしいですが自分は歪みを足す用途でよく Bass に挿しています。VLA-3A が普通のコンプレッサーで、これも Black Rooster Audio のやつですね。

 まあ重くなりました。

 

 

 これで Drums と Bass のミックスは一先ず置いておくとし、以降、Drums のフェーダーには手を付けないように自分はしています。というのも、音量の基準となる楽器を一つ決めておかないとよく分かんないことになるからです。まあ Drums である必然性はないと思うんですが、一曲を通してずっと同じ音量感で鳴っていてくれるのでちょうどいいですよね。

 

 Drums と Bass が終わったら、次はおおよその場合 Guitar を弄り始めます。

 

 

Guitar

 『cor』のサビではバッキングギターとそのダブリング、リードギターの三本が鳴っています。これは先に未処理版と処理済版を聴いたほうがいいかもです。

・未処理

・処理済

 処理済のほうを単体で聴くと「なんかめっちゃハイ削れてね?」って気持ちにもなるんですが、他の楽器と混ぜて聴いてみると(それこそ完成版の音源とか)Guitar 単体としてはこれくらいに留めておいた方がバランスがよかったりよくなかったりします。

 それぞれみていきます。まずはバッキングギターから。

 MIRINN の Guitar 担当1であるところのマコトシアカ君から送られてきたデータを、そのまま左へ 60% 振っただけのやつです。ここにまずは EQ を通します。

 100Hz 以下は kick と bass の領域なのでカット。5kHz 以上もうるさいだけなのでカット。250Hz 辺りディストーションギター特有のぎらついた音があるのでカット(ここを削るといい感じに抜け感が出る)900Hz - 2000Hz はボーカルと被り得る(し、出すぎているとなんだかモコモコした音になる)のでカット。ディストーションギターは 3900Hz 近辺がマジでうるさいのでカット(単体で聴くとめちゃくちゃカッコいいんだけど、混ぜるとめちゃくちゃうるさい)

 バッキングをもっと前に出したいときはまた別のアプローチをとったほうがいいと思いますけれど、今回のバッキングギターは主人公というよりはむしろ頼れる隣人みたいなポジションにいてほしかったので、奥へ引っ込める感じの EQ で整えました(ところで引っ込まれすぎても困るので、カットしすぎると終わる)

 ミキサーはこんな感じ。一つ目の EQ が上で説明した音作り用のもので、二つ目の EQ は他の楽器隊との兼ね合いで挿した微調整用のものです。BlackAsh SC-5 はコンプレッサーです。例によって Black Rooster Audio の。挿しただけで一瞬で良くなるって感じは全然しないんですが、ちょうどいい具合に抑えてくれるような気がしているのでちょくちょく使ってます。

 一連の処理を通したのが上です。だいぶ落ち着いたトーンになりました。

 

 次にダブリング。

 これもまたマコトシアカ君から送られてきたデータを、そのまま左へ 75% 振っただけのやつです。ダブリングの目的は音に厚みを持たせることなので、この音自体は聴きとれなくても(正しくは、ダブリングが入っていることを聴き手が認識できなくても)問題なく、というわけで完全に奥へ引っ込める目的で調整していきます。

 先と同様、まず 100Hz 以下をカット。250Hz 付近のぎらついた音もカット。そして 5000Hz 以上を先ほどよりも強めに切り、さらに 3000Hz あたりのノイズっぽい成分もカットしてます。

 コンプは強めにかけてます。RATIO が 25:1 くらい、ゲインリダクションが -10db 辺り、アタックは最速。「音の壁感がほしいな~」って思いながら弄ってた気がします。

 ダブリングにはこの 2 つしか通していないのでこれで完了です。

 こっちもだいぶ落ち着いた感じの音になりました。

 

 最後にリードギター

 MIRINN の Guitar 担当2であるところのりっか君から送られてきたデータを、そのまま右へ 60% 振っただけのやつです。基本的な処理は上の二つと同じです。

 100 Hz 以下をカット。ディストーションギターは 250Hz 付近がモコモコするのでカット。 1500 Hz 辺りはボーカルと衝突するのでカット。3500Hz がでていると混ぜたときにうるさくなるのでカット(ただ、リードギターは聴かせたかったので弱めにカットしている)7000Hz 以上はマジでいらないのでカット。

 リードギターに施した処理はこの EQ だけですね。あとは適当にいい感じのリバーブを通して完了。

 

 個々の音処理が終わったら全部を bus に通し、弱めのコンプでまとめて終わりです。どの音も大きな括りでみれば「歪み系のバッキング」なので、共通の bus に通して処理しています(ギターソロやクリーンのリフなんかはまた別の bus へ通します)。こんな感じ。

 5, 7, 14, 15, 16, 17 のミキサーの音が全て 10 のミキサーへ送られるようにしていて、その 10 のミキサーに挿さっているのが右の Pulsar Mu ×2 です。glue として使っています(なんで 2 回通すのって話があるけど、こっちのほうが自分の好みに近い音が出ているような気がするから)

 一連の処理を施したのが、冒頭に貼っていた処理済の音源です。

 

 この曲にはクリーントーンのギターリフも存在するので、そっちについても触れておきます。

 りっか君から送られてきたデータを、そのまま右へ 60% 振っただけのやつです。これについては、他の音とベタ貼りで合わせた段階で結構馴染みが良かったのであまり弄っていません(改めて聴いたらギター、めちゃ上手くてワロタ)

 まず 100Hz 以下をカット。クリーントーンのリフは 400Hz 前後の「ぼーん」という音がモコモコ感を出しているような気がするので、その辺りをカット(リフ単体で聴く分にはめちゃくちゃ気持ちのいい音で好きなんですけどね……)。あとは他の楽器隊との兼ね合いで気になった部分を緩めに抑えています。

 あとはいい感じにリバーブ(ディレイ)をかけて完成です。製作途中で「付点八分ディレイ最高!!!」という気持ちになったので、今回はそのように設定しています。

 Native Instruments の RAUM がめちゃくちゃ好きで、ずっとそればかり使っています。リバーブ(ディレイ)の類って通した音の配置に依らず中央から鳴ることが多いんですが、たとえばギターリフならそのリフが鳴っているのと同じところまで LR を振ってやると、他の音とごちゃごちゃしなくて聞き取りやすくなるような気がします(本当?)。あと、リバーブのローはバッサリ切ります。

 

 

Piano

 ピアノに関しては自分が教えてほしいくらいなんですが、一応書きます。

 MIRINN のキーボード担当であるところの nion 君から送られてきたデータそのままです。Piano は(内部データ的には)センターに配置してるんですが、元々の音源で左手側は左から、右手側は右から聞こえるよう設定されているので、実質的には左右に振ってる感じですね。

 既に左右に Guitar がいて、さらに後からセンターに Vocal が入るので、それらの邪魔をしないような、それでいてそれなりの存在感もある感じにしたいというモチベーションがありました(ところでうまくいったのかは不明)

 まず 100Hz 以下をカット。500Hz あたりが Guitar や Bass と混じってごちゃごちゃしている風に聞こえたのでカット。あとは 8.4kHz あたりを思い切りブースト。鍵盤をしばいた瞬間のカチッとした音がほしいときにこの辺を持ち上げることが自分は多いです(音色による)

 こんな感じです。上から順に「EQ(音作り用)」→「音を大きくするやつ」→「音を広げるやつ」→「EQ(微調整用)」→「歪み足すやつ」です。Soundgoodizer、いまでも Piano にだけは挿しちゃうんですよね……( Piano へ通したときの音の感触が好きすぎて)

 ここには映ってないですが、この後に別のミキサーへ送りリバーブを掛け、それらを bus へ通し、さらに EQ を掛けた後に Pulsar Mu(コンプレッサー)でしばいてます。

 後段に挿しているのは iZotopeOzone 9 Dynamic EQ ですが、今回は Dynamic EQ としてではなく MS 処理できる EQ として使っています。Mid は弄らず、Side のローを削り、4.8kHz 辺りをブーストし、7kHz 以上を持ち上げています。4.8kHz あたりはハンマーのしばき音が入っていたりいなかったりするので、音を硬くさせたいときにはこの辺りをブーストすることが自分は多いです。7kHz 以上の処理はまあおまじない的なそれ。

 という一連の処理を施したものがこれ。

 こういう硬いピアノの音、好きなんですよね~。

 

 

Vocal

「インストでもちゃんと楽しめる曲にしたいな~」というモチベーションが自分は強く、なのでボーカルのミックスはオケがすべて完成した後、最後の最後に取り掛かるのがだいたいいつもの流れです。

 未処理といいつつピッチ・タイミングだけ施したデータです。これを既に完成しているオケに何とかして馴染ませていきます。

 上から順に説明します。

 まずは iZotope Nectar 3 ですがどういう使い方をしているかというと、Vocal Assistant へ通してダイナミクスだけ稼いでもらった後、それ以外の余計なパラメータをすべてミュートします( EQ とか DeEsser とか Reverb とか)。まあ、要は音量を大きくするためだけに使ってます。上のやつを聴いても、明らかに音が大きくなってますね。

 次、Vocal Rider Mono。これは Wavesプラグインで、音量調整をリアルタイムでやってくれるやつです。「 Vocal はダイナミクスの差が大きいので、先に音量感を整えてからコンプを掛けましょう」みたいな話がよくなされますが、整えるところをある程度やってくれる便利なプラグインです。動作を slow、レンジを ±6 くらい、フェーダーが基本的に下へ動くよう Target をそれぞれ設定するといい感じに機能します。

 Fruity parametric EQ 2。FL studio 付属の EQ ですね。こんな感じでかけてます。

 300Hz あたりを削るかどうかは割とケースバイケースな気がするんですが、今回は削りました(オケも聴かせたかったので)3.8kHz 辺りをブーストしているのは Vocal が Guitar に埋もれてほしくなかったからです。

 Gullfoss。SOUNDTHEORY というところのプラグインです。こいつが本当に優れモノで、リアルタイムで EQ 処理をしてくれます。とはいえ、任せすぎると変な感じになるので 400Hz 以下、5.5kHz 以上はパスするように設定しています(特に低域と高域が変になりがち。中域はいい感じにしてくれる)

 iZotope Ozone 9 Exiter。結構露骨に作用してくれるのでお気に入りです。

 Black Rooster Audio KH-EQ1。見た目はこんな感じです。

 めちゃくちゃ低いところとめちゃくちゃ高いところを調整するのと、サチュレーション目的で使います(下に Saturation のノブがある)

 最後に Pulsar Mu と Nectar 3(ディエッサー目的)、あとリバーブを通せば終わりです。

 

 という感じに処理した諸々を最後に組み合わせ、bell や synth pad や、あとはハモリなんかもパパっと混ぜて、マスターにリミッターを挿してから書き出すと冒頭のこれになります。

 

 

 おつかれさまでした。

 

 

あとがき

 いや、あとがきらしいあとがきは特にないんですけど、こうでもしないと記事のオチをつけるのが難しいなと思って……。

 ミックス、要望があったので一通り書いてはみたものの、マジで何も分からず。何も分からないなりに「前よりはよくなるように」という気持ちだけで毎回向き合ってるんですが、今回の M3 に向けた制作期間中「これ、お金払ってちゃんとした人に依頼したほうが早くね?」って感覚に 4756289 回くらい襲われました。ところで『cor』は自分がこれまでに作った曲の中では(ミックスが)一番うまくいった曲と思ってもいて、なので頑張ってよかったな~って気持ちもなくはないです。

 一年後とかにこの記事を読み返したとき、「適当なことやってんな~~~~」って言えるようになってたらいいなあって感じですね。