消えたポラリス

 

『消えたポラリス / ソニオル&一葉&なずしろ』の話をします。この曲、割と色んな人が気に入ってくれているっぽく(ありがたい)、それはそれとして自分の側にも書き残しておきたいことがないではなかったので、忘れないうちに形にしておこうという魂胆です。話をしますといっても今回は作曲面でのそれだけになる予定で、なぜなら作詞・編曲に僕が一切噛んでいないからですが、それはそれなので、作曲段階で意識していたことなんかを雑に書いていこうと思います。

 ↓こことかこことかこことかで聴けます。

www.youtube.com

kitchon.bandcamp.com

www.youtube.com

 

 余談ですが、ソニオルさんのアルバムはオンライン販売もしているらしいですね。

sonisoniol.booth.pm

 みんなも購入して『さよならライカ』を聴こう!

 

 

〇歌い出し、A メロ:B major

 この曲は頭から順に作っていったので、ここが最初のとっかかりになります。

f:id:kazuha1221:20211126014326j:plain

 最近はメロとコードを同時に考えて作曲することがほとんどなのですが、今回は( A メロに関して言えば)コード進行決め打ちで作り始めました。理由としては「最近 6451 の曲作ってないな~」と思ったことと、同時進行で制作していた『リスティラ』が明るめの曲調だったので、暗めカッコよソングを歌ってほしい~~~という風に思考が進んだためだったような気がします。

 6451 の変化形として自分が特に気に入っているのが VIm7 - IVadd9 - Vsus4 - I ( - V/VII ) なのですが、この進行だとずっとソ(移動ド)の音が持続していて、最後の V/VII を除けば主音であるド(移動ド)の音もそうなってるんですよね。なんていうか、だからというのもおかしな感じがして、というのもうまく説明できないからなんですけど、ものすごい停滞感があるなと思っていて。停滞感? 浮遊感? ふわふわする感じ? 6451 がベースになっているので物悲しさみたいなのは若干あるんですが、そこをこう曖昧に暈す感じのアレっていうかなんていうか。状況は進行していっているはずなのに足はずっと止まったままみたいな、そんな感じの、ひとりだけ取り残されている感みたいな?(みたいな話は作詞担当へマジで一切通していないのですが、ここら辺の感覚もちゃんと一致してて良すぎ? になってました( 2A メロとか))(音価が二つしかないのも影響してそうですけど) その辺りを結構気に入っていて、自分が 6451 を使うときはだいたいこの形になっています。自分の他の曲だと『スカイブルーナイトメア』なんかもずっとこの進行ですね。

 メロについて。結構お気に入りです。

 実際に人に歌ってもらうことを想定して曲を作るようになってから気が付いたこととして、一曲中の最高音・最低音をどこに置くかということ以上に、歌い手の得意な音域内のどの辺りに主音を配置するかという問題もあるなということがあって。たとえば mid1C - hiA くらいを得意とする人がいたとして、その人に歌ってもらう曲としてたとえば A メジャーの曲を用意すると大変なことになりそうだな……みたいな。主音って(少なくともポップスの文脈では)一番使いたくなる音だと思うんですが、それがボーカル音域の真ん中ちょい下と一番上にあって、やってやれないことはないけれどちょっと難しそう、くらいの感じ?(属音も中途半端なところにある) 実際 BUMP の音域がだいたいそれくらいで、正しくは mid1A# - hiA くらいが地声得意音域っぽいんですが、A♭、A、A♯キーの曲が極端に少ないんですよね。マジでほとんどなくて、あったとしてもサビは転調して別のキーへ行ったりとか。……みたいなことに対して『リスティラ』を作っている辺りで自覚的になって、『消えたポラリス』のほうが制作としては後発だったので、そういった意識が多少引き継がれているような気がします。とはいえ、『リスティラ』を作っていたときに「盛り上がる前(サビ以外)は B メジャーがボーカル音域(と自分のメロの癖)的にちょうどいいスケールな気がする~」ということを考えていたので、『消えたポラリス』の調もそのように決定されました。主音が最低音付近にあると、こう、落ち着いた感じの歌い方になりそうで VIm7 - IVadd9 - Vsus4 - I の雰囲気に合ってるな~と思ったり思わなかったりしていました。

f:id:kazuha1221:20211126014422j:plain

 シェルはちょっとだけ意識していた(良い感じのところで 3rd shell をとる)んですが、どちらかというとカーネルのほうをみていたような気がします( soundquest の用語)。具体的には強傾性であるところのファの音を使いたくて。あとは主音にあまり着地したくない(前述の浮遊感まわりから来ている意識)という感じの諸々がいい感じにアレした結果、こういうメロになりました。IVadd9 の上のソ、最高!

f:id:kazuha1221:20211126014442j:plain

 こっちは二番 A メロの後半で、ここの流れが個人的に一番のお気に入りです。特に前半八小節「暗い夜 廻る空 消えない ポラリス」のところが好きで、下側の主音から始まって、上の主音へ一瞬触れてから、ふらふらと下側の主音に着地する、っていう他の A メロよりも長く下側の主音を避けて進むフレーズになっていて。一気に盛り上がる編曲も相まって妙にふわふわしたような、マジで空が廻っているみたいなフレーズ。直前の歌詞が「あの宇宙(そら) 向こうの 場所まで行けるかな」なのも良いんですよね、ここ(良い……)。飛び立つ三秒前って感じで。

 主音を避けるという意識は月吉 171 号に出した妙なインスト曲(世には公開されていない)を作っているときに芽生えたもので、「宇宙っぽい浮遊感って何なんだ~」となった結果、「着地感を、つまり主音を避ければいいのでは?」という結論へ至り、というのがその妙なインスト曲から得た知見でした。何がどう繋がるのか、分かんないものですね。

 

〇間奏1:B major

f:id:kazuha1221:20211126014459j:plain

 このデモを作っている段階ではまさかこれが本決定になるとは思っていなかったので、ここのメロディはマジで適当に生成されました(仮置きメロのつもりだった)。意識としては、唄い出しが結構いい具合に情緒のある感じになってくれたので、一発目の間奏では逆にそういうのがないフレーズのがいいかなあと思ったりしていました(後続、二発目の間奏でまた良い感じのフレーズをやるつもりだったので)。あと、これは割と気を付けていることなんですが、同じ和音から始まるパートが連続した場合、出だしのメロ(コードの上で一番最初に鳴るという意味)を変えるようにしています。具体的には、歌い出しは VIm7 の上のド(移動ド)から始まるんですが、間奏1は VIm7 の上のミ(移動ド)から始めています。なんか、同じところばっかり始めると芸がないかなあって、その程度の理由なんですけど。

 

〇間奏2:B major

f:id:kazuha1221:20211126014523j:plain

 ドとレとソ(移動ド)だけでいいらしい、音楽。嘘です。でもソドレソド~(移動ド)はいいフレーズですよね。VIm7 の上で主音を鳴らしたい気持ちが自分はめちゃくちゃ強く( 3rd shell 最高! の気持ち)、そのために間奏1のほうで VIm7 の上のミ(移動ド)を消化しておいたわけですが、なので心置きなく VIm7 の上のド(移動ド)を鳴らしています。先に述べた通り、「弦で暴れまわってほしい~~~」という気持ちがめちゃくちゃにあったので、ここは完全に弦の気分で生成されたフレーズでした(デモ生成段階ではすべてピアノでしたが……)。頭がロングトーンだったり、全体的にあまり細かく動いていなかったりは、たぶんその辺りの意識です。

 某㍋のせい(おかげ)で IVadd9 の上でシ(移動ド)を鳴らさないと気が済まない人間になってしまい(『リスティラ』でもポエトリー地帯のあとのメロでやっている)、『消えたポラリス』でもものの見事にそうなりました。どうして?

 後半、食いで進行する IIm7 - IIIm7 - IV のところが割と気に入っていて、下降するストリングスに対してコードは上昇させるっていう、みんなやってるやつです。IIIm7 の上のレ(移動ド)もかなり良い音しますよね。最高~。

 余談。実はここの弦のフレーズがサビメロの伏線になっていたりいなかったりするんですが、この曲を聴いてくれた人のどのくらいが気づくんだろう? と気になっていたりします。気づきました?

 

〇 B メロ:B major

 ここのピアノとボーカルが超良いので是非聴いてください。

f:id:kazuha1221:20211126014548j:plain

 この曲における B メロの役割は A からサビへの繋ぎといえばそうなのですが、より詳細には A メロの浮遊感を滑らかに振り払いつつ、サビの盛り上がりへ向かって助走をつけるみたいな、そんな感じのことを想定していました(そういう意味で A メロとの対比を狙っています)。なので、とりあえずコード進行のほうから触れておくと、浮遊感の逆を行こうということで VIm7 からの下降クリシェを起用しています。どことなく沈んでいくみたいな地に足つくどころか吸い込まれていくみたいな、だからこそサビでの短三度上転調も映えるかなあっていう(サビで転調することはだいたいこの辺りで決めていた)。VIm7 からの下降クリシェをするときって 2,3,4 番目のコードを何にするかでいくつかパターンがあると思うんですが、今回はこれが一番合っているように思ったのでこれでいきました。

 後半は IVM7 - IVm7 - bVIIadd9 - Vsus4 です(実際の編曲では IVM7(9) - IVm9 - bVIIadd9 - Vsus4 になっている)。たとえば A メジャーにおける IVm7 - bVII って Dm7 - G なんですが、これは C メジャーの IIm7 - V でもあって、そんな感じで IVm - bVII を転調先の IIm - V とみて短三度上に転調するやつ、かなり好きなんですよね(『ここにいるよ。』のサビ入りでも全く同じことをやっていて、あっちは IIm7 - IIIm7 - IVm7 - bVIIsus4 )。意図としては、下降クリシェや IVm7 で沈みに沈みまくった雰囲気を bVIIadd9 の浮遊感で一気に振り払うという感じでした。という話を僕は作詞担当へはもちろん通していないんですが、ところで一番 B メロの bVIIadd9 に入る瞬間の歌詞は「僕は走り出したんだ」なんですよ。いやー、マジで完璧すぎる。まさかそこまで考えてはいないだろうと思いますけれど、だったら尚更すごくないですか?

f:id:kazuha1221:20211126014603j:plain

 メロ頭が VIm7 の上のミ(移動ド)になっているのは、上で言っていたパートごとの連続を避けるっていうのと同じです。この B メロでは「沈んでいく感覚」を意識していたということもあって、メロディは全体的に下へ偏っていますね(下側のシ、ド、レ、ミ(移動ド)を重点的に使っている)。A メロと比較してみると分かりやすいです。

f:id:kazuha1221:20211126014653j:plain

「沈んでいく感覚」につられたものとして三、四小節目に入っているミ♭(移動ド。画像上ではレ)があります。なんていうか、半音で動くメロディに特有のやりきれなさっていうか気怠さっていうか、そういうのがほしいなあと思いつつ、「でも、流石にこれはやりすぎじゃない?」と反復横跳びをしながらメンバーへ提出したところ、そのまま採用される流れとなりました(このミ♭、かなりお気に入り)。あとは音符の単純な数を多くして、音価二つで展開していた A メロから一転する感じを演出したかったというのもあります。

 

〇サビ:D major

 一サビ頭の歌詞が「見上げた空にポラリス」なんですが、一サビ入った瞬間の「空を見上げてる感」がヤバすぎてもうめちゃくちゃ好きです。これにはストリングスのフレーズが大いに貢献している。

『リスティラ』と同じ要領で調を B メジャーに決定したというのは前述の通りですが、G# メジャーへ転調する『リスティラ』と違って、『消えたポラリス』では短三度上の D メジャーへ転調します。理由はいくつかあるんですが、サビはちょうど気持ちいい音域で主音を連打しまくりたかったというのがあり、D メジャーに移ると主音が半音三つ分上へ動くので、今回はこっちがいいな~という感じで選びました。関係ないですが、『リスティラ』は逆にサビで下中音であるところのラ(移動ド)を最高音域で連打したかったので、下の調へ降りてボーカルの音域へ収まるようにしています。こういった意識で調を選ぶの、これまでは本当にやってこなかったのでとても新鮮でした。

f:id:kazuha1221:20211126014713j:plain

 これは某㍋にも指摘された(この曲に対してではなかったけれど)ことですが、自分で認識している手癖として II7 があって、この曲だとサビの六小節目に挟まれています。詳しくは 170 何号かのあふきちに書いたので吉音の人はそちらを参照してほしいのですが、なんていうか、ものすごく自分好みの裏切り方ができるコードだなと思っていて。堀江晶太が好きだから II7 が好きなのか、II7 が好きだから堀江晶太が好きなのかは意見の分かれるところですが、BUMP の使う II7 も好きなので II7 が先なんだと思います、たぶん(適当)。特に II7 の上のソ(移動ド。11th)がめちゃくちゃに好きです(『未完成の春』も『ステラグロウ』も『リスティラ』も、歌メロは全部 II7 の上のド(移動ド)だけど……)。みんなも VIm7 から II7 へ進行しよう!

f:id:kazuha1221:20211126014729j:plain

 間奏2前半 4 小節のメロディとサビ前半 4 小節のメロディは実はほとんど同じ(間奏2の画像と見比べてみると分かりやすいかも)で、違うところといえばリズム、音の区切り方、あと一ヶ所だけ間奏2だとラ(移動ド)になっているところがサビだとファ(移動ド)になっていたり(「見上げた空にポラリス "も"う迷わない」のところ)、それくらいです。間奏2のフレーズが思いのほか良かった(当社比)ので、コードも同じにするつもりだったし、サビでもそのまま使っちゃえ~ということで使いました(間奏のフレーズを弄ったやつがサビのフレーズになってるやつ、めっちゃ好きなんですよね。ちょっと違いますけど『初音ミクの消失』とか)。とはいえ、こちらはストリングスではなく歌メロだったので、歌っていて楽しいように多少の変更点を加えての起用となりましたが。短三度上への転調も相まって良い感じに収まったかな~と思います。あとは 3rd, 7th, 9th,11th,#11th を叩きまくって気持ちよくなろうという気持ち。

 余談。落ちサビの「確かに在ったの"に"」の 3rd shell( V の上のシ(移動ド))がマジで好きすぎて最高~って気持ちになってました。みんなも 3rd を叩きまくろう。

 

〇 C メロ:D major

 ここがこの曲で一番やりたかった場所です。

f:id:kazuha1221:20211126014818j:plain

 この曲でここだけ VIm 始まりでなく IVM7 から入ります。これまでずっと VIm から入っていたからこその特別感があっていいですよね、こういうの。『リスティラ』の制作を通して「 4563 って超良くね?」という気持ちになり(ポエトリー地帯)、というのも一生着地しないっていうか、疾走感を保ったままで展開していける進行だなーというイメージがあって、C メロは最初から最後までずっと走っていてほしかったので(誰に?)、結果、この進行を起用するに至りました。

f:id:kazuha1221:20211126014832j:plain

 もう 3rd 叩きまくりです。メロが『夕凪』に似ているという指摘を既に数人からなされましたが(というか調も同じなんですが)、これは完全に意図的です(調は偶然です)。『リスティラ』でも同じようなことをやってたんですが、C メロを作るときにソニオル曲となずしろ曲からそれぞれモチーフを引っ張ってきて、それでメロディを組もうとはじめに考えて。まずソニオルさんのほうから探そうとやってみたものの、この曲のここでやりたかったことといい感じに噛みあうものが見つけられず(特に、食いのフレーズにしたいという気持ちに噛み合わなかった)、逆から攻めてみるかとなずしろさんの曲のほうから探した結果、一瞬でこれになり、これになりました。出だしのララシド(移動ド)だけ借りてきて、あとは自分の好きなように組んでいった感じです。最高音がファ(移動ド)になっているところなんかは完全にそうですね。

 音域を一気に上へ寄せることでラストスパートを演出したい、という気持ちもありました。ベースラインも動かしまくってます。

 

 

 

 以上、こんな感じでした。覚えていることはたぶんだいたい書いたんじゃないかなと思います。色々考えてメロを作ったのが割と久しぶりのことだったので、忘れないうちに書き残せてよかったです(嘘で、書きながら「ここなんでこうしたんだっけ……」というのが幾つもあった)(もう忘れている)。