20220114

 

 ちょうど一週間くらい前に伏見へ行って、その数日後に八坂へ行った。八坂神社も円山公園も、少なくとも一度は来たことがある場所で、だけど名前とは一致していなかった。連れられながら、「ああ、これが八坂だったのか」と思った。明らかに整備の行き届いた公園は、夜遅く、日付を跨ぐ頃ということもあって人影はなく、それはそれで幻想的。夜の公園を歩くこと自体は初めてでなかったけれど、でも自分が好んで足を運ぶのは、それこそ日中は子どもが駆け回っていそうな、むき出しの土が敷き詰められた場所だから。新鮮ではある。一人でも歩いてみたいと思って、昨日の夜、あり得ないくらい冷え込んだ深夜三時に家を出た。なんとなく電話をかけて、そのまま話をしながら。手袋なんてないから耳元に当てた指先が痛くて痛くて。数分おきに手を入れ替えて、ポケットの中で温めていた。八坂に着いて、数日前に人に連れられたときと全く同じ順路で歩いてみた。道中に野良猫。なんとなく近づいてみて、でもすぐに距離を取られる。怖がらせたいわけでもないから、こちらからも距離を取る。一週間前の伏見でも、数日前の八坂でも野良猫をみた、伏見の野良猫を思い出す、彼は逃げなかった。逃げるどころか、向こうから近付いてきて、針金みたいな尻尾が上着を掠めていったことを覚えている。野良猫ってこの辺りにも案外いるんだな、と考えながら。だけど結局、猫に触れることはなかった。昔だったらそうしてたのかもな、と思ったりもした。

 今朝、というか午前五時過ぎ。進めていた作業が微妙に行き詰ったので、休憩がてらということで外へ出てみたら、普通に雪が積もっていた。そういえば Twitter で誰かが言っていた、雪が積もっている。外へ出て確かめようとまでは思わなかったけれど、実際、目の当たりにしてみるとそこそこテンションが上がる。雪は好き。特に理由なんてないけれど、白いからかも。みてみたら、家の前の道路には既に一人分の足跡がついていた。それと、恐らくは二台分の車輪の跡。一番乗りじゃなかった、と思った、真っ先に。こんなことなら Twitter でみた瞬間に外へ出ておけばよかったな。なんだか損をしたみたいな。そんな気持ちも、歩きながら雪の踏む音に耳を傾けているうちにどこかへ消えてしまった。やっぱり雪は好きだ。いまこの瞬間だけは、世界の全部が自分のためだけにあるみたいな錯覚。みんなまだ寝てる。自分しか知らない。そんな馬鹿みたいなことを考えて、それから、昨日の夜、自分から逃げていった野良猫のことを思い出した。つられて伏見の猫も。雪。雪か。いったいどうしてるんだろ。この真っ白な夜に、自分なんかはすっかり浮かれてしまっているけれど、彼らとしては死活問題だったりするのかな。こんなに積もっちゃって、寒そうだな。自分はこれから買い物に行って、好きなだけ雪を満喫したら部屋へ戻って、暖かいとは言えないけれど死にはしない程度の場所で暢気に朝ご飯を食べるけれど、あの猫たちは? 思い出す。思い出すことしかできないから。なんか、いい感じのところで暖かくしてくれていたらいいな、と思う。まるで他人事。今日はこれからバイトらしい。