観た映画1

 

 音楽に限らず、ものづくり全般においてインプットって大事、というか必須だなと思っていて。そのインプットというのは、たとえば音楽を作るのであれば音楽を聴くことが、といった風に一対一で対応づくものではないような気がしていて、アニメやイラスト、小説、映画など、媒体は何でもよくて、それを介して得たもの自体が自身の創作に転用されるというか、そういう理解を一先ず持っている。というので、インプットはちゃんとやったほうがいいよね、という自戒に落ち着くのだけれど、ところで。ところで、アニメやイラスト、小説は放っておいても自分なりペースで吸収するのでいいのだけれど、問題は映画。映画を観る習慣がなさすぎて、いや、別になくてもいいんだけど、生きていく上で必須なわけじゃないし……。一方で、この世界には素晴らしい映像作品が星の数ほどあるはずで、そしてまた自分自身の中に映像作品への興味があることも事実であり、であるならもういますぐに観たほうがいいでしょ! と思い立ったというのが事の次第。いつかやりたいなって言ったこと、基本的にやらないがちだから、自分は。

 そういうわけで、これからしばらくの間、より正確には自分が飽きるまでの間、ちょくちょく映画を観ていきたく、その感想を断片的にでもこのブログへ残しておこうと思う。といっても、そんなちゃんとした文章を書くぞという意気込みを毎回掲げていたら今後へ続いていく気が全くしないので、とりあえず分量とか内容の精査とかはいったん考えないこととして、書きたいことを書きたいだけ書くという感じで。というか、アマプラの見放題にはないレンタル作品を中心に観たせいで、いま感想を残しておかないと全部忘れてしまうというのが動機としては正しい。

 

 以下、物語の核心に触れるようなことは書かないつもりであるものの、軽度なネタバレは多々あるので注意。事前情報なしでいきたい人は、目次から気になったタイトルを amazon の検索窓へ入力してください。

 

 

○ ザ・メニュー (2022)

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8QB7DH4

監督:Mark Mylod
脚本:Seth Reiss,Will Tracy

 

 初手に観る作品として合ってます、これ? ただ、推薦文を一目みて割と心を惹かれたということは事実だったので、早いうちに観ておきたかった。

 監督とかちゃんと意識していったほうがいいんだろうなって思うから、ちゃんと調べよう。音楽でいう作曲家とかに当たるのかな。いや、脚本が作曲で、監督は編曲? 分からん。分かんないけど、まあ完全に対応づくものではないだろうから、それっぽい理解でいいや、一旦は。というので、冒頭に書き足しました、いま。というか、いま wikipedia を読んで知ったんだけど、ディズニーの配給だったんだ。R15+ だったのに。

 基本の枠組みはクローズドサークルで、かなり雰囲気重視のホラーサスペンスという感じがした。いや、サイコホラー? ジャンルに明るくないので何も言えない。なんていうか、鑑賞中はそんなこと全然思わなかったのだけど、いま改めて振り返ってみると、『儚い羊たちの祝宴』にも通じる仄暗さが多少あるかもしれないな(ブラックユーモアという点でも)。そういう意味では、割とお気に入りかも。

www.shinchosha.co.jp

 一作を通して、舞台設定の裏側についてはほとんど語られなかった印象。たとえば、企業の秘匿している裏情報をどうやって入手したんだ、とか。あとは、マーゴという名前に違和感を持ったこととかもそうかな。いや、これはたぶん裏で調べたんだろうけど。一企業の裏情報を手に入れられるくらいの力があれば、個人情報の特定くらいは朝飯前だろうし。

 思うに、提供物の差なのかな。自分はどちらかといえば、あの狂気を生み出すに至った過程をこそ知りたいと願ってしまうのだけれど、ところでその過程を描くと今度は狂気の側の立場が危うくなって中途半端だし。というので、事象の過程は鑑賞者の想像に委ね、最終局面のみをシリアスに描くという方向へ舵を切った作品なのかな、と思った、観終えた直後は。ところで、一晩明けてある程度整理された頭で考えてみて、だからそう、それで『儚い羊たちの祝宴』のことを思い出したんだよな。あれを初めて読んだときの読後感と似通っているなと思う、結構。そう思うと、初手から結構好みの作品だったような気がして、嬉しい。でも、万人には勧められないかなあ。かなり人を選ぶような気がする。

 余談。『儚い羊たちの祝宴』は短編集で、収録作品の中だと北の館の殺人がかなり好きなんだけど、今回の『ザ・メニュー』に近いのは『儚い羊たちの晩餐』かも。最後に読んだのが割と前で、記憶が曖昧なので適当なことを書いているかもしれないが……。

 余談2。クローズドサークルからの脱出法が本当によかった。相手とちゃんと同じ土俵へ立つっていうのかな。だから、どうして脱出できたのか、という疑問は持たなかった。かなり納得。

 


○ シェフ 三ツ星フードトラック始めました (2015)

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00XALZBPU

監督:Jon Favreau
脚本:Jon Favreau

 

 監督も脚本も同じ人か~、と思って wikipedia 開いてみたら主演の人の顔写真が貼られており、横転。嘘だろ。はるまきごはん? 『アイアンマン』シリーズの監督やってたり、アベンジャーズシリーズの製作総指揮を執っていたりするらしい。すげ~。

 作中で Twitter が繰り返し登場するんだけど、UI がマジの古で面白かった。自分が中学とか高校の頃のやつっぽい。真っ先に書く感想がこれでいいのか。

 ストーリー前半は結構胃がキリキリする感じの展開。クリエイター、って括りにしていいのかな。でもまあ料理も創作だしな。いわゆるクリエイターの目線に立ってみると「どうすればいいんだ~~~~~~」と頭を抱えてしまうようなやりとりが、前半ではずっと続く。ここのところ周囲でホットな話題であるところの(ホットか?)自己実現 vs. 家庭の話でもある。決して息子のことを蔑ろにするような父親ではないのだけれど、ただ、どうしても二の次というか、それよりは仕事優先というか。でも、その仕事でも理想と現実の板挟みになっており、うわ~~~~~~~。

 前半はなんかもう、厨房の中、夜のバー、散らかったアパート、からのインターネットレスバみたいな、閉塞感のある場面が連続するのだけれど、だからこそ、後半のマイアミへ飛んでからの解放感はすごかった。海も空も突き抜けて綺麗だし、高速道路沿いに映り込む風景だっていかにも広大で。ポンポさんで言ってたの、多分こういうことだろ。

 全編通して、生々しさがあるからこそのハートフル作品だなって感じがした。なんていうんだろ、説得力? いや、等身大かも。その、作品の中に印象的だったシーンがいくつかあるんだけど、主人公(父親)と主人公を追いかけてやってきた男性、それと主人公の息子が三人で車移動する場面があって。大人組二人がかなり品のない歌を歌い始めるんだよね。物語の冒頭、主人公は息子に向かって「母さんがいない場所でも汚い言葉は使うな」って言っていたにも関わらず。で、二人の歌を聴いて車の壁にもたれていた息子が思わず零したみたいに笑う、っていう。30 秒もなかったと思うんだけど、真っ先に思い出すのがこのシーンかも。見せ場みたいなシーンは他にもたくさんあったけど、ここがかなり心に刺さった。ぐさっと。そういう些細なワンシーンを積み重ねていく後半戦だからこそ、最後のアレはかなり食らった。作中において、息子当人の気持ちが本人の口から語られることはほとんどないけれど(車を改装してるシーンくらい?)、時と場合によっては、だから言葉なんか一つもなくたっていいんだな。重要なものは映像の中に全部ある! って感じの気持ちになれて、本当によかった。

 子どもの頃に観てもマジで意味わかんなかっただろうなと思うし、もうちょっと年齢を重ねてからまた観てみたいなとも思う。そういう作品。マジでよかった。これは色んな人に勧めたい。

 余談。直前に観た『ザ・メニュー』が料理をテーマにした作品だったから、というノリで雑に選んだ作品だったのだけれど、めちゃくちゃ好みで良かった。

 余談2。出てくる料理が軒並み美味しそうで、海外旅行したくなってくる。

 余談3。エンドロールで撮影の裏側がほんのちょっとだけ紹介されるのだけれど、そこで料理担当っぽい人の言っていることが面白くて(かつ真剣で)よかった。

 


○ M3GAN (2023)

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0BYW4H2L3

監督:Gerard Johnstone
脚本:Akela Cooper

 2023 年公開の映画なのにもう続編決定してるんだ、ワロタ( wikipedia 調べ)。『ザ・メニュー』と同じホラーというカテゴリではあるけれど、一番打者とは打って変わって、こちらは純粋なホラー作品という感じだった。
 何よりもまず話したいことがあって、M3GAN 役の動きがヤバすぎてすごい。Amie Donald。いや、調べてみたら撮影自体にはかなり色んな技術が用いられているっぽくて、全編がそうというわけではなさそうなのだけれど。ただ、あの、物語の後半に挟まれる追いかけっこのシーン、調べた感じあれは一発撮りっぽくて、これが本当にすごい。ロボットの動きを映像の中にはめ込むのができるとして、それと並べても一切の遜色がない機械的な動作をこなす子役。何者すぎる。
 最初は隣のおばさんにちょっと同情してたんだけど、可哀想すぎるし。ところで、改めて流れを振り返ってみると、M3GAN は犬に首元を噛まれた辺りからおかしくなっていったような気がするので、やっぱり同情の余地はないかもしれない。いや、あの柵を修理するのが本来どちらの役回りだったのかは知らないからアレだけども。
 ホラーとは言ったけれど、露骨なジャンプスケアはほとんどなくて、「明らかに不穏だな~」と感じた場所でちゃんと不穏な出来事が起こってくれるので、そういう意味ではホラー初心者の自分でもちゃんと適切な容量内で楽しむことができた。びっくりさせる系の演出が多用される作品は心臓に悪いんで……。ただ、流血表現がちょくちょくあるので、そこだけ苦手な人は注意って感じかな。
 余談。解決法、「それでいいのかよ!」と思った。拍子抜けとかって意味じゃなくて、「あ、それがそうなるの?」っていう驚き、あるいは面白さ。あのシーンだけ漫才的な面白があったな。

 


○ メッセージ (2016)

監督:Denis Villeneuve
脚本:Eric Heisserer
原作:Ted Chiang

 

 そう、原題は『Arrival』なんだよね。って、いま wikipedia を開いて思い出した。映画の中でもどこかで提示されていたと思うけれど、どこだっけ。エンドロールの前とかだった? と思って改めて観てみたところ、合っていた。まあ、そこくらいしか挟み込める場所ないもんな。

 物語の仕組み的な部分にかなり早い段階で気づいた気がする。最初のきっかけはめちゃくちゃ早かったけど、明確に引っ掛かったのは序盤の最後かな。二人で殻を眺めているシーン。物語の進行に伴って情報が開示されるにつれて、「なるほど~」感が次第に補強されていく構造はミステリー的な趣きがあったような。なんていうか、いち早く気付くことのできた人にはボーナスがある感じの作りという意味で。

 いや、面白かったな。ストーリーがどうこうとかじゃなくて、作品のコンセプト自体がそもそも面白かった。地球外生命体との対話。というより、そもそもの話、どのようにして意思疎通がなされうるのかという点について。いやでも、それ自体は 1,000 年ほど前の地球上では珍しくもない交流形態のはずだよな、と考えていたら実際にそういう話も作中で出てきた。アボリジニの話。といっても、その状況ではお互いに人間という共通の土俵に立っているわけで。手を使って文字を書くとか、口から声を発するとか、火を使うし太陽は眩しいし、って最低限の共通事項があるにはあって。だから、そこを外してみるといったいどうなるのか、っていう壮大な思考実験をみせられたみたいな、そういう気分。

 話せることは他にもありそうな気がするけれど、これ以上は実際に観てもらわないと何も言えない! 吹き替え版は(アマプラ会員なら)無料で観れるっぽいので是非。

 余談。その名前自体は初見でなかったものの、そういう風に読んだことは一度もなかった。なるほど……って気持ちにならざるを得なかった、流石に。

 


○ 映画大好きポンポさん (2021)

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09SQDL6FP

監督:平尾隆之
脚本:平尾隆之
原作:杉谷庄吾人間プラモ

 

 もう、本当によかったです、これ。創作をやっている人間には恐らく軒並み刺さるんじゃないか。ところで、Twitter でフォロワー内検索をしてみたら、本当に大量の人間が当作品に言及していて、「知らなかったの、俺だけか……」って気持ちになった。早く教えてよ~(ところで、少なくとも自分の観測内で当作品に言及していた人は数年前からずっといたので、早く観なかった自分が悪い!)。

 良いセリフとシーンがたくさんあった。最初の、横断歩道の水溜まりへ踏み込む女の子に対して、主人公が「いい絵だ……」って呟くとことか。あと、ポンポさんの台詞でもいいやつがあった。なんだっけ。「その人を見た瞬間に、物語が頭に溢れてくることが稀にある。そんなときは間違いなくいい作品に仕上がるわね」。これはもう本当にその通りすぎて、すごい。「幸福は創造の敵。彼らにクリエイターとしての資格なし」(想像?)。一番すごいのは、こういったメッセージが真っすぐに届くような作品構成になっていることかもしれないな。言葉に直すだけなら誰にだってできるけれど、その内側に説得力を宿すことは本当に難しくて、ところでこの作品はその困難をやってのけている。すごい。

 切り捨てる覚悟と突き詰める覚悟。その両者についての話がずっとなされている。映画監督や女優へとたどり着いた経緯、撮影データの取捨選択を迫られる場面、納期を破るとかいう究極のコンプライアンス違反を犯してでも追及したいもの。全部が全部、同じ話をしている。丸っこい絵柄やポンポさんの可愛らしい言動の裏側で、創作にとって最もシリアスかつクリティカルと思われる話題がずっと扱われていて。すごい。しかも、ちゃんとよくない部分も描いているのがいいなと思った。覚悟を突き通した先に待ち構えているかもしれない破滅、というか。これは、マーティン・ブラドック演じるダルベールの話。そこにも救済はあったけれど、でも破滅した部分はしっかりと破滅していて。あのシーンが必要だった理由もわかる。あれがないと、切り捨てる覚悟が足りないから。

 本当によかった。全員観てほしい。ポンポさんがカッコいいし、主人公もめちゃくちゃカッコいい。アランが喫茶店で口にした台詞にも納得できる。本当に全員観てほしい。d アニメストアに契約していればレンタルなしで観れるので。

 余談。最後の最後まで最高だった。

 

 


 というので、今後もちょくちょく映画を観ていけたらいいな~って感じです。

 補足。観る映画の候補は『R15+じゃダメですか?』という作品と、周囲の人たちのオススメから選んでます。

comic-days.com

 なので、面白そうな映画 info. があればいつでも教えてください。ところで、上の漫画は普通に面白い(し絵がいい)ので映画好きかどうかとか関係なしにオススメです。