必然性


 いまにして思うことといえば、「どうして自分は音楽をやっているのだろう」というのがあります。事の発端はといえば、昨年のいつ頃かに「一葉さんってなんで作曲してるんですか?」(要約)という旨の話を受けたことがあって、その当時のことを昨日か一昨日かに何故かふと思い出して。その質問に対するそれなりの回答は持ち合わせていて、実際、当時の自分が当時の自分なりに考え、返事を済ませたところでそのやり取り自体は解決しているのですけれど。しかし、だから、いまにして思うこととして、「そもそもなんで音楽だったんだ?」というやつがあるなって、そんな疑問に行き当たったというか。これが考えてみると結構不思議な話で。いま『不思議な話』を『不思議な那覇市』にタイプミスしちゃって一人でニヤニヤしてたんですが、それはさておき。というのも、自分にはいわゆる『音楽経験』のようなものが一切ないんですよね。これはあの、なんだろう、謙遜的な意味合いで使っているのではなく、本当の本当に皆無で。習い事で嫌々ピアノ教室に通っていただとか、あるいは実家に何かしらの楽器があっただとか、そんなことは一切なくて。正確に物事を伝えるのであれば、まず実家には姉の電子ピアノがありましたが、僕の記憶している限りでそれがケースの外へ出されたことは一度もなく(とはいえ、姉とは結構歳が離れているので、姉は姉でそれなりに使い倒していたのかもしれません)、それと父親のベースが父親の部屋にあったんですが、触ったことは一度もなく(「ベースって変な音しかせんし、そもそも弦硬すぎだし、どうやって演奏すんねん」と思っていました、当時。全国のベーシストに謝罪したい)。あとは祖父母の家にいたって普通のピアノがあり、記憶の中の姉はたしかそれをよく演奏していたなと思うものの、しかしまあ、自分が触ったことは一度もありません。なので、中学校卒業段階までに触れたことのあった楽器って、それこそリコーダーとハーモニカくらいのもので、いや、マジなんですよ、これが。完全に音楽とは無縁の幼少期を送っていたという感じで、それが何を思ったのか、中学三年生のときに DTM というものの存在を知り、そこから傾倒していくわけですけれど。冷静になってみると、これ意味が分かんないよなって。いやまあ、たしかに中学生くらいの頃に音楽へ目覚めるというか、楽器を始めてバンドを組んで……みたいな、そういうのと同様に捉えてみるとありがちな話かもなって思いもしますけれど。でも、自分の幼少期といえばそれこそ絵のほうがメインだったというか。幼少期から中学卒業にかけてですけれど。絵は昔からずっと描いていて、もちろんお遊びみたいな出来のものばかりでしたけれど、漫画を描いたりもしたし、あとは小説の真似事をしたりもしていて。いまはもうそんな文化消えちゃってるかもしれませんけれど、むかしは小説掲示板という、その名の通り小説専門の掲示板がインターネットにはあって、今でいう SSVIP みたいなものですかね。そこで色々遊んだりもしていたんですが。だから、音楽とは無縁の人生どころか、音楽以外とは縁がありまくりの人生を送っていたんですよ、気持ち的には。当時は自由帳が友達でしたし、本当に。いや、ならばこそですけれど、「真っ当に進むのであればそっちじゃね?」という感覚があるっていうか、そのような考えに至ったのが昨日だか一昨日だかのことで。「なんで音楽だったんだろう?」って。いまだって絵は描いてるし、小説の真似事もまあやってはいるし、漫画はさすがに描いていませんけれど……。でも、どれにしたって音楽ほどの熱量は割いていないというか、いま自分が最も熱心に向き合っているのは音楽のはずで、「いや、なんで?」っていう。これがマジで分かんなくて、結論も何も一切出ておらず、というか答えなんて見つからないような気がしますけれど。でも、なんだろうな。昨日の記事で書いたような『気づいたらこうなっていた』とはまた違っているような気がしてはいるんですよね、これに関しては。必然性なんてなかったはずといいますか。というのも、自分が音楽を始めた明確な起点のようなものははっきりと覚えていて、その後の道をどういう風にここまで辿ってきたのかということも思い出せる状態にあって。だから『気づいたら』というような不明な点はなく、完全にかつての自分の意思に依って今がこうなっているということはまあ間違いがないんですが、ただ、その『かつての自分の意思』とかいうものがあまりに分からなさすぎるって話で。マジで、どうしてこんなにも音楽へ傾倒することになったんだろ。別に音楽に溢れた家庭で育ったというわけでもなく、そもそも自分がある程度自由に音楽を聴くことのできる環境を手に入れたのって、たしか中二くらいのはずで。そのときの誕生日プレゼントかなんかで買ってもらったウォークマンが手持ちアイテムに加わるまでは、音楽を聴くことのできた場所ってテレビの前(アニメの OP,ED )と父親の車の中だけでしたし。マジで謎。かつての自分は音楽のいったい何にそれほど強く惹かれたんでしょう。それこそ、あれほど自由帳に描きまくっていた絵をめっきり描かなくなる程度にはのめりこんだわけで。それがこうしていまもずっと続いているわけですけれど。うーん。どうしてなんでしょう、本当に。