空が好きらしい

 

 以前、「自分の作る曲に何かしらの傾向ってあったりするのかな?」と思って『調(スケール)』の観点から調べてみたことがありました。結果は半年ほど前の Twitter に放流されているのですが、ここにも載せておくことにすると、全体のおよそ 30% が D#major(ほとんどCminor)で最多、次に多かったのが Cmajor(Aminor)で約 27% という感じでした(ここまで偏っているとは思わなかった)。ちなみに記録当時で最も少なかったのは G#major で、これは初めて作ったオリジナル曲がそうでした。次に少なかったのが Gmajor で、これには三回生の時に作った『未完成の春』のAメロが該当します。また C#major、Bmajor の曲は一つもありませんでした(これも意外な結果だった)(転調で一瞬だけ経由したりしたことはあったかも)。作曲面で大きく関与した作品しかカウントしなかったので、合作も入れたりするともう少し変わってくるかもしれませんが、ともあれ、これを機に「ああ、自分って D#major(Cminor)が好きだったのか」ということを自覚し始めたという裏話があります。まあ、これを知った後に作った二曲が F#major と Amajor(F#minor)であることは、実はこの辺りに関係していたりもします。いつもは使わない調を使ってみよう、みたいな。

 

 今回はこれと同じようなことを『歌詞』について行ってみよう、という話です。上のやつは 30 曲くらいサンプルがあるのに対して、自分が歌詞を書いた曲はといえば 10 曲あるかないかみたいな感じなので大した結果は出てこないように思われるんですが、『好きな言葉の傾向』くらいなら抽出できるんじゃないかな~という大雑把な目論見を持っています。

 この記事を読んで得られる情報は『@1TSU8が好きな言葉』だけです。興味のない人はブラウザバックした方が良いです。

 抽出には KH Coder を用いました。対象曲は古いものから順に『(昔書いたやつ)』、『キミとボクと時の箱庭』、『スカイブルーナイトメア』、『「じゃあね、また明日」』、『想造世界のプレリュード』、『ここにいるよ。』、『未完成の春』、『startrail』、『アイ』です。また、平仮名カタカナの違いや、『白』と『白色』みたいなのは(場合によっては)同一の単語としてカウントしています。

 

 

 早速ですが、まずは名詞から。上位から順にこうです。

・空  30回

・声  16回

・言葉 15回

・青  14回

・色  12回

・世界 11回

・夏  9回

 

 どうですか?(どうですかって何?) 正直な話、個人的にはもうこの時点でそれなりに意外な結果なんですが、「イメージ通りだな~」みたいな人はいますか?(いるとしたら、それは相当に他人のことを注意深くみている人)

 いや、まずどうしてこの調査をやってみようと思ったのかということについて話すんですが、それは三回生の夏頃から「自分の歌詞ってやたらと『青』って言葉が入ってないか?」という印象があったからです。それまでもそれ以降も、意図的にそうしているというわけでは全くなかったんですが、しかし結果としてそうなっていて、なので今回の調査も「『青』以上に頻繁に使っている言葉なんてないだろう」と高を括ってのスタートでした。蓋を開けてみれば『青』は第四位で、ベスト3にも入れていませんでしたね。

 個々の単語についても触れていきます。

『空』。これ、言われてみればめちゃくちゃに使ってました。先に挙げた対象曲の内、すべての曲に登場しています。『青』についてはまだ意識的でしたが、こちらは完全に意識の外でした。二回生くらいまでは『虚空』、『夜空』、『氷空』、『星空』、『夏空』、『青空』と熟語形が目立ちますが、三回生あたりから単純に『空』と形容詞句の組み合わせで使っていることが多いですね。後述しますが、『青』がとりわけ連想しやすいというわけではなくて、本当は『空』がそうなのかもしれません。

『声』。これについては自覚的でしたが、まさか『青』よりも使っているとは思っていませんでした。『想造世界のプレリュード』を除く全ての曲で一度は使われています。ざっと眺めたんですが、他の語句との結びつきというか用法をみるに、自分は『声』という単語に対して『遠くに響いている』という印象を持っているらしいです。

『言葉』。全く意識していなかった。「言葉にすると全部嘘っぽい」という印象を自分はかなり強く持ってるんですが、実際、歌詞でも『言葉』=『本質でない』みたいな書き方がほとんどですね。その割に、他人の言葉には一喜一憂したりするんですが(憂いはしていない)。

『青』。好きな色……、というわけでもないはずです。自分の身の回りに青色のもの(小物、衣服など)が多いかと言えばそんなことはなく、というかほとんど皆無ですが、しかし、何かを表現しようとすると同時に引き合いに出される色といえば、それはまあ間違いなく『青』だという感じがします。一番イメージしやすい色だということです。

『色』。大体が『青色』とか『夜明け色』とかですが、自分が『色』という言葉を単体で使う場合は、具体的にどういった色なのかについて言及したくないということがすべてかと思います。『夏の色』とか『涙の色』とか。場合によっては『空の色』とかも。

『世界』、『夏』。この二つは少し例外的で、一曲の中で何度も使いすぎたせいでランクインした連中です。とはいえ、繰り返し何度も用いるくらいには思い入れのある単語ではあります。たとえば『秋』や『冬』は一度も使ったことがありません。

 名詞についてはこんな感じで。ほかには『星』、『涙』、『雨』辺りが何度か出てきてます。

 

 次は動詞。活用は区別していません。

・知る  16回

・唄う  11回

・見える 11回

・解る  9回

・消える 9回

 

「へえ~」って感じです。名詞や後述の副詞と違って、動詞ってあんまり意識しないので。ただまあ、知覚動詞が上位に来るんだろうなって気はしてました。

『知る』。「『信じている』と『解っている』と『知っている』はすべて別物」という考えが自分の中にあり、それはまあ過去の記事を漁ってもらえればどこかに書いてあると思うんですが、なので『知る』は数ある動詞の中でも自分の内だとかなり特別な部類のものでして、それがまあ如実に反映されているなという感じです。16回のうち否定形で使われたのは6回、過去形が4回。純粋に『知っている』という意味で使ったのは2回だけ。『信じる』という言葉は大学に入ってから(作詞では)一度も使っていません。

『唄う』。それはまあ上位に来るでしょうね、という感じの言葉。自分も大概、歌詞中で心象風景を書き殴る人間だと思いますが、純粋な物語ではないというか、やっぱり中心には唄(音楽、ではなくて唄)があるんだなあということをいま再認識しました。その点、『アイ』なんかは特殊ですね。

『見える』。『見る』ではなくて『見える』が上位に入ってくる辺り、自分の普段考えていることが透けてみえるという感じがしますね。11回のうち、実に8回が否定形であり、残る3回はすべて『見えた』で過去形です。さらに言えば、なんていうか、自分の使う『見える(見えない)』はほとんどすべて概念的なもので、物理的な話ではなかったりします。

『解る』。『分かる』や『わかる』ではなくて『解る』ですね。前の二つは作詞だとあんまり使いません。『分かる』と『解る』の差異は、前者がただ単純な事態の把握みたいなものという感じで、後者は何かしらの経験を伴った理解という感じの定義を自分は採用しています。これも否定形で用いることがしばしばですね。

『消える』。実はほとんどすべての曲で用いられている動詞です。否定形で使ったのは一度だけです。元々が否定的な言葉なので、『消えない』は(文脈によるものの)比較的肯定的な意味になり、要するにほとんど否定的な意味で使っているということですね。

 動詞はこんな感じで。これ、作詞に限った話じゃないんですが、自分はやたらと否定文(否定形)を使いがちという傾向があるらしいです。

 

 続いて形容詞。そんなに使ってません。

・遠い  7回

・怖い  3回

・嬉しい 2回

・広い  2回

・寂しい 2回

 

 複数回登場しているのは以上五つの単語だけです。

『遠い』。否定形の濫用といい何といい、物理的な意味でも精神的な意味でも、「自分の身近にあるのとはまた違う何かを探す」みたいなものが傾向としてあるような。だからって近くにあるものを蔑ろにしているわけではないんですが……。

『怖い』。『スカイブルーナイトメア』と『startrail』でそれぞれ使われている形容詞です。『怖い』と感じる瞬間って、いやまあ勿論様々な時があるんですが、それが外部に漏れ出てくるのは人間関係にまつわる場合であることが(自分の場合は)多く、なのでこの2曲という感じですね。

『嬉しい』。三回生後期辺りから使い始めた形容詞。こういったことを当たり前みたいに歌詞に書けるようになったのが、ちょうど『ここにいるよ。』を跨いだ辺りからだったという感覚はあります。

『広い』。これは特殊な例で、『アイ』に『広すぎる空』の形で二回だけ使われています。

『寂しい』。ほとんど使いません。大学に入る前の曲で一度、『アイ』で一度だけ使っています。それら二つの曲は若干特殊で、というか繋がってるんですが、自分とは明確に別の、純粋に架空の人物にスポットを当てて書いた歌詞なので、『寂しい』みたいな言葉も普通に入ってきたりします。

 形容詞はこんな感じ。本当に全く使っていませんね……。

 

 最後は副詞。

・いま  17回

・いつか 16回

・きっと 13回

・ずっと 11回

 

 副詞、割と意識的に組み込みがちです。

『いま』。これ、『ここにいるよ。』で8回カウントされているので実際には11回くらいで、『いまも』の形で登場することが最多です。

『いつか』。唄っている瞬間よりも未来のことを指しているのが6回、過去のことを指しているのが10回です。ですが、最近の、具体的には『ここにいるよ。』以降で用いられている『いつか』はほとんど未来を指してのものですね。やっぱりあの辺が転機だったらしいです。

『きっと』。間違いなく自分が一番好きな副詞だと思います。曖昧な希望を表すことがあれば、強弱様々な意思を表すこともあり、あるいはそれら両者の間で揺らめいていることもあり、そういった不確定さを好んでいるのではなかろうかという推理があります。が、実際のところはよく分かりません。「できるはずもないこと」を「できる」と言ってしまえるのが『きっと』という魔法、みたいな? そういうところが好きなだけの気もします。

『ずっと』。言われてみれば頻繁に使っている言葉シリーズ。『色』のところでも若干話したんですが、具体的な長さについては特に言及しないところが多分気に入っているのだと思います。ほんの一瞬だったり、一ヶ月だったり、数年だったり、あるいは永遠だったり。

 副詞はこんな感じです。

 

 

 以上。絶対数は少ないながらも、やはり多少の傾向はあるらしいということがみられて個人的には楽しかったです。『明日』、『今日』、『夜』は何度も出てくるにもかかわらず、一方で『昨日』や『朝』は全く出てこないとか(『朝』は一度だけ使っている)。ある種の方向性が見えますよね、こういうの。これと同じことを SS でやってみたいんですが、それはまた後日という感じですね。今週は作曲のタスクが本当にヤバい!(ヤバイ) #yabai_JP