20190922

 

未完成の春 青色の熱が君に解ける
十月の教室の隅っこで そんな言葉を白紙に零した

未完成の春 雨の匂いに暗がりは沈む
誰も星も月もない夜が 翳した傘を叩いていた

水影に残響音 塞ぎ込んだ空を飛び越えて
そっと口ずさんだ この唄が 掠れた声 聞こえなくても

ああ いつか 出会った僕らを待っていたんだ
散々な現実が 望んだはずもない朝が

それでもさ きっと 扉を開くから
きっと 笑い返すから

君と過ごした当たり前を 君と交わしたさよならを
時が経って 全部忘れて だけどそれでもなくさないよ
消えた七つ星の温度は この唄に残しておくから
春の空にまた出会う そのときは 初めましてだね

未完成の春 失った青色を取り戻せ
なんて馬鹿みたいな合言葉 でも だからこそ好きになれたんだ

跨いだ平行線 赤信号 一台分の距離
気にしないよなんて微笑んだ その言葉が嬉しかったよ

夕風に折りたたんだ想像は紙飛行機
何も知らないまま 明日の空も 笑う意味も

それでもさ 僕らはあの日同じ場所にいた
だから 迷わなくていい

一歩踏み出す街の中で 君の見上げる春の空に
一人だけの夜が溢れて 翳した傘を叩くのなら
ずっと遠いその未来まで 涙の色は知らなくても
唄いかける今がある だからもう 出会えなくたっていい

どんな言葉を重ねたって 何も分かちあえやしなくて
さよならしたこともなくして だけどそれでも出会えるのは
ずっと遠いその未来から 僕らが唄う今ここまで
繋いでいる 未完成の 始まりを
七つ星を 知っているから

春の空にまた出会う そのときは 初めましてだね