院試問題解くやつ5

 

 そろそろ院試勉強しなきゃなあと思いながらこの夏を過ごしているのですけれど、割とだらだらしてしまっているので tex の練習(未だに tex を全く使えない)も兼ねて(主に)京大理学研(数理解析)の入試問題をブログで解いていこうと思います(不定期)。解答が公表されているわけではないので(だから困っているんだが)、誤答等も多々あると思われますが、その際はよければ僕の方まで連絡してください(マジで頼む)。

 ここまでテンプレです。

 

平成21年度 京都大学大学院理学研究所 数学・数理解析専攻 大問1 K は虚 2 次体とする.すなわち,K= \mathbb{Q} \left( \sqrt{ -d } \right) で,d は正の有理数であるとする.このとき,\mathbb{Q}4 次の巡回拡大体 LK を含むものは存在しないことを示せ.ただし,L/ \mathbb{Q} が巡回拡大であるとは,L/ \mathbb{Q} が Galois 拡大であって,Galois 群 \mathrm{Gal} \left( L/ \mathbb{Q} \right)巡回群となっていることをいう.

 このシリーズ(?)では平成31年度から遡って京大院試で出題されたガロア理論の問題を扱ってきたわけですけれど,少なくともこの間に解いてきた問題の中ではダントツで難しいという風に感じました(取っつきやすそうな見た目をしているのに).もしかするともっと鮮やかで簡潔な解法が存在するのかもしれませんが…….

 位数 4 の群 C _ 2 \times C _ 2C _ 4 の差異として,たとえば前者には位数 4 の元が存在せず後者には存在することとか,あるいは前者は非自明な部分群を三つ持ち後者は一つしか持たないといったことなんかがあるので,与えられた三つの条件『虚二次体』,『四次拡大』,『巡回拡大』をうまく使って何とかそういった部分に帰着させることを考えるわけですが,そこまで運んでいく部分がかなり難しかったです.

 以下,解答.

 

 \sqrt { -d } = \alpha とおく.二つの拡大 \mathbb{Q} \left( \alpha \right) / \mathbb{Q}L/ \mathbb{Q} \left( \alpha \right) はともに二次拡大で,特に有限次分離拡大である.よって L= \mathbb{Q} \left( \alpha \right) \left( \beta \right) となる \beta \in L \backslash \mathbb{Q} \left( \alpha \right) が存在し,このとき L = \mathbb{Q} \left( \alpha , \beta \right) である.以降,この拡大 L/ \mathbb{Q} は四次巡回拡大であると仮定する.

 \beta\mathbb{Q} , \mathbb{Q} \left( \alpha \right) 上の最小多項式をそれぞれ f \left( x \right) , g \left( x \right) とする.仮定より \mathrm{deg} \: g \left( x \right) = 2 となり,g \left( x \right)f \left( x \right) を割り切る.g \left( x \right)\beta でないほうの根を  \beta ^ {\prime} とおくと,明らかに f \left( \beta ^ {\prime} \right) = 0 であって,

\beta + \beta ^ {\prime} = q _ 1 + q _ 2 \sqrt{ -d } , \beta \beta ^ {\prime} = q _ 3 + q _ 4 \sqrt{ -d } \:\: \cdots \left( 1 \right)

となる q _ 1 , q _ 2 , q _ 3 , q _ 4 \in \mathbb{Q} が存在する.

 拡大 \mathbb{Q} \left( \beta \right) / \mathbb{Q} を考える.これが二次拡大であると仮定する.\beta \notin \mathbb{Q} \left( \alpha \right) だったから \mathbb{Q} \left( \alpha \right) \cap \mathbb{Q} \left( \beta \right) = \mathbb{Q} である.よって Galois の推進定理より \mathrm{Gal} \left( L / \mathbb{Q} \right) は二次巡回群 C _ 2 の直積に同型となり L/ \mathbb{Q} が四次巡回拡大であるという仮定に矛盾する.したがってこの拡大は四次拡大であり \mathrm{deg} \: f \left( x \right) = 4 となることがわかる.さらに \mathbb{Q} \left( \beta \right) \subset \mathbb{Q} \left( \alpha , \beta \right) であって両辺ともに \mathbb{Q} の四次拡大体であるから,結局 \mathbb{Q} \left( \beta \right) = \mathbb{Q} \left( \alpha , \beta \right) となる.

 上のことから明らかに \beta \in \mathbb{C} \backslash \mathbb{R} であるから\beta + \gamma , \beta \gamma \in \mathbb{R} となる \gamma \in \mathbb{C} \backslash \mathbb{R} がただ一つ存在し,それを \overline{ \beta } とかくことにする(いわゆる \beta複素共役).f \left( x\right) \mathbb{Q} 係数の多項式だったから f \left( \overline{ \beta } \right) = 0 となる.もし \beta ^ { \prime } \in \mathbb{R} なら \left( 1 \right) 式で \mathbb{Q} 上の複素共役をとることで

\overline{ \beta } + \beta ^ {\prime} = q _ 1 - q _ 2 \sqrt{ -d } , \overline{ \beta } \beta ^ {\prime} = q _ 3 - q _ 4 \sqrt{ -d } \:\: \cdots \left( 2 \right)

となり,\left( 1 \right) 式と \left( 2 \right) 式より

\beta - \overline{ \beta } = 2 q _ 2 \sqrt{ -d } , \left( \beta - \overline{ \beta } \right) \beta ^ {\prime} = 2 q _ 4 \sqrt{ -d }

ゆえに \beta ^ {\prime} q _ 2 = q _ 4 となる.\beta + \beta ^ { \prime }\beta \beta ^ { \prime } の少なくとも一方は \mathbb{Q} に含まれないことに注意すると q _ 2 \neq 0 なので,両辺を q _ 2 で割ることにより \beta ^ { \prime } \in \mathbb{Q} が結論され,しかしこれは f \left( x \right)\mathbb{Q} 上既約であることに矛盾する.よって \beta ^ { \prime } \in \mathbb{C} \backslash \mathbb{R} だから \beta のときと同様に複素共役 \overline{ \beta ^ { \prime } } と表すことにする.これは f \left( \overline{ \beta ^ { \prime } } \right) = 0 を満たす.

 もし \beta = \overline{ \beta ^ { \prime } } なら \overline{ \beta } = \beta ^ { \prime } だから,ふたたび \left( 1 \right) 式から \beta + \overline{ \beta } = q _ 1 および \beta \overline{ \beta } = q _ 3 が得られるが,これは f \left( x \right)\mathbb{Q} 上既約な四次式であることに反する.したがって \beta , \beta ^ { \prime } , \overline{ \beta } , \overline { \beta ^ { \prime }} はいずれも相異なる複素数f \left( x \right) = 0 を満たすから f \left( x \right)\mathbb{C} 上で

f \left( x \right) = \left( x - \beta \right) \left( x - \beta ^ { \prime } \right) \left( x - \overline{ \beta } \right) \left( x - \overline{ \beta ^ { \prime } } \right)

因数分解できる.\mathbb{Q} \left( \beta \right) / \mathbb{Q} は Galois 拡大だと仮定していたから \overline{ \beta } , \overline { \beta ^ { \prime }} \in \mathbb{Q} \left( \beta \right) である.

 x,y \in \mathbb{R} を用いて \beta = x + y \sqrt{ -1 } と表すと \overline{ \beta } \in \mathbb{Q} \left( \beta \right) より x, y \sqrt{ -1 } \in \mathbb{Q} \left( \beta \right) となる.したがって \mathbb{Q} \left( x \right)\mathbb{Q} \left( y \sqrt{ -1 } \right) はともに拡大 \mathbb{Q} \left( \beta \right) / \mathbb{Q} の中間体となるが,この拡大は四次巡回拡大であったから真の中間体は一つしか存在しない.\mathbb{Q} \left( \alpha \right) \nsubseteq \mathbb{Q} \left( x \right) は明らかなので \mathbb{Q} \left( x \right) = \mathbb{Q} となるしかなく,すなわち x \in \mathbb{Q} である.さらに

\displaystyle \frac{ \beta }{ \overline{ \beta } } + \frac{ \overline{ \beta } }{ \beta } = \frac{2 \left(x^ 2 - y^ 2 \right) }{x^ 2 + y^ 2} \in \mathbb{Q} \left( \beta \right)

であって,同様の議論により \displaystyle \frac{x^ 2 - y^ 2}{x^ 2 + y^ 2} \in \mathbb{Q} である.よってある整数 p , q を用いて  p \left( x^ 2 - y^ 2 \right) = q \left( x^ 2 + y^ 2 \right) と表せる.ただし p0 でない.すると p+q \neq 0 であれば \displaystyle y^ 2 = \frac{ p-q }{ p+q } x^ 2 となり y^ 2 \in \mathbb{Q} が従うが,このとき \beta + \overline{ \beta } \in \mathbb{Q} となり f \left( x \right)\mathbb{Q} 上既約な四次式であることに矛盾する.ゆえに p+q=0p \neq 0 だったから x^ 2 = 0 が必要.よって x=0 である.

 同様の議論を \beta ^ {\prime} = z+w \sqrt{ -1 } に対しても行うことにより z=0 となる.ゆえに \beta\mathbb{Q} 上の最小多項式 f \left( x \right) の根は \pm y \sqrt{-1}, \pm w \sqrt{-1} の四つである.

よって Galois 群 \mathrm{Gal} \left( L/ \mathbb{Q} \right) の元 \sigma , \tau であって,

\sigma \left( y \sqrt{-1} \right) = w \sqrt{-1} , \tau \left( y \sqrt{-1} \right) = - w \sqrt{-1}

を満たすものが存在する.いま \left( 1 \right) 式より yw \in \mathbb{Q} であることに注意すると

\sigma \left( y \sqrt{-1} \right) \sigma \left( w \sqrt{-1} \right) = \sigma \left( -yw \right) = -yw

より \sigma \left( w \sqrt{-1} \right) = y \sqrt{ -1 } となる.同様にして \tau \left( -w \sqrt{-1} \right) = y \sqrt{ -1 } となり,ゆえにこれらは \mathrm{Gal} \left( L/ \mathbb{Q} \right) の位数 2 の元である.そしてこのことは \mathrm{Gal} \left( L/ \mathbb{Q} \right) が四次巡回群に同型であるという最初の仮定に矛盾している.

 以上により,\mathbb{Q} の四次巡回拡大体 L で虚二次体 K= \mathbb{Q} \left( \sqrt{ -d } \right) を含むものは存在しない.

\Box

 

 たとえば \mathrm{Gal} \left( \mathbb{Q} \left( \sqrt{ -d } \right) / \mathbb{Q} \right) の元として \sqrt{ -d }- \sqrt{ -d } へ移すような元 \sigma が取れるので,これを L に拡張するといった方法も考えられると思います.その場合 \sigma\beta\overline{ \beta ^ { \prime } } へ移し,これをさらに \beta ^ { \prime }. \overline{ \beta } といった順に動かす(あるいは \beta を三番目の \overline{ \beta } へ移す)\mathrm{Gal} \left( L/ \mathbb{Q} \right) の位数 4 の元として得られるわけですが,この場合 yw \in \mathbb{Q} であることを示せば矛盾します.yw \in \mathbb{Q} ということは x=z=0 まで言わなくとも x, z \in \mathbb{Q} というところまでいえば得られる結果なので,そちらのほうが若干スマートかもしれません(と解答を書き終えてから思いました).もっと簡単に解ける方法をみつけたというかたがいらっしゃれば是非とも教えてください.

 ちなみにこの問題で述べられている主張は『虚(二次体)』,『四次(拡大)』,『巡回拡大』のいずれを外しても成立しません.それぞれを外した場合の反例は,たとえば次のようになります.

・『虚(二次体)』を外した場合

 Galois 拡大 \mathbb{Q} \left( \sqrt{-17-4 \sqrt{ 17 } } \right) / \mathbb{Q} は実二次体 \mathbb{Q} \left( \sqrt{17} \right) を中間体にもち,この Galois 群は四次巡回群 C _ 4 に同型.

・『四次(拡大)』を外した場合

 Galois 拡大 \mathbb{Q} \left( \zeta _ 7 \right) / \mathbb{Q} は虚二次体 \mathbb{Q} \left( \sqrt{-7} \right) を中間体にもち,この Galois 群は六次巡回群 C _ 6 に同型.ここで \zeta _ 7 1 の原始 7 乗根である.

・『巡回拡大』を外した場合

 Galois 拡大 \mathbb{Q} \left( \sqrt{d} , \sqrt{-1} \right) / \mathbb{Q} は虚二次体 \mathbb{Q} \left( \sqrt{ -d } \right) を中間体にもち,この Galois 群は二次巡回群の直積 C _ 2 \times C _ 2 に同型.

※『虚(二次体)』を外した場合の反例については,これの前年度か前々年度の院試問題を参照してください.

 

 既に力尽きそうですが,続いて二問目.

 

平成20年度 京都大学大学院理学研究所 数学・数理解析専攻 大問2 t不定元とし複素数体上の有理関数体 K= \mathbb{C} \left( t \right) を考える.複素数 p,q \in \mathbb{C} をとり L= \mathbb{C} \left( t^ 3 + pt + q \right) とおくとき,K/L は代数拡大であることを示し,さらに K/L の Galois 閉包( K を含む最小の L 上の Galois 拡大体)とその L 上の拡大次数を求めよ.

 平成27年度の問題を解いた際に紹介した問題です.あの場合と同じようにして解くことができます.

 以下,解答.

 

 s=t^ 3 +pt +q, f \left( x \right) = x^ 3 + px + q -s とおくと,f \left( t \right) = 0 である.s\mathbb{C} 上超越的なので yx と独立な不定元として \mathbb{C} \left[ s \right] \cong \mathbb{C} \left[ y \right] である.したがって  x^ 3 + px + q -s\mathbb{C} \left[ s \right] 上既約であることと  x^ 3 + px + q -y\mathbb{C} \left[ y \right] 上既約であることが同値.さらに  x^ 3 + px + q -y\mathbb{C} \left[ y \right] 上既約であることと  x^ 3 + px + q -y\mathbb{C} \left[ x \right] 上既約であることが同値であって, x^ 3 + px + q -y\mathbb{C} \left[ x \right] \left[ y \right] の一次式なので既約である.よって  x^ 3 + px + q -s\mathbb{C} \left[ s \right] 上既約であって,ゆえに  x^ 3 + px + q -s\mathbb{C} \left( s \right) 上でも既約である.これより f \left( x \right)t\mathbb{C} \left( s \right) 上の最小多項式だから拡大 K/L は三次拡大であって,特に代数拡大である.

 f \left( x \right) = \left( x-t \right) \left( x^ 2 + tx +t^ 2 +p \right) であって,

\displaystyle x^ 2 + tx + t^ 2 + p=0 \Leftrightarrow x= \frac{-t \pm \sqrt{ -3t^ 2 -4p }}{2}

である.よって \sqrt{ 3t^ 2 + 4p } \in K となることと K/L が Galois 拡大となることが同値である.\sqrt{ 3t^ 2 + 4p } \in K なら,ある a , b \in \mathbb{C} があって 3t^ 2 + 4p = \left( at + b \right) ^ 2 と表されることになるが,t^ 2 , t の係数および定数項を比較することで p=0 が必要かつ十分であることがわかる.よって p=0 なら K/L は Galois 拡大で,その拡大次数は 3 である.一方 p \neq 0 なら \sqrt{ 3t^ 2 +4p } \notin K なので,これを K に添加した K \left( \sqrt{ 3t^ 2 + 4p } \right) K を含む L 上の Galois 拡大体で最小のものとなり,その L 上の拡大次数は 6 である.

\Box

 

 今年度の院試で出題されたガロア理論の問題は,当日受験した知人づてに入手した問題をみて既に解いていたのですが,今回扱った問題が思いのほか重たかったので解答を書くのは次回に回します.まあ今年度の問題にしたって,平成21年度のものに比べればかなり簡単でしたが…….

 

 ところで,先日試聴動画が公開されたばかりであるところの『THE IDOLM@STER SHINY COLORS FR@GMENT WING 06 – Single』からストレイライトの唄う楽曲『Wandering Dream Chaser』が公開されたので全人類聴いてください.

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