院試問題解くやつ3

 

 そろそろ院試勉強しなきゃなあと思いながらこの夏を過ごしているのですけれど、割とだらだらしてしまっているので tex の練習(未だに tex を全く使えない)も兼ねて(主に)京大理学研(数理解析)の入試問題をブログで解いていこうと思います(不定期)。解答が公表されているわけではないので(だから困っているんだが)、誤答等も多々あると思われますが、その際はよければ僕の方まで連絡してください(マジで頼む)。

 ここまでテンプレです。

 

平成27年度 京都大学大学院理学研究所 数学・数理解析専攻 大問3 \mathbb{C} \left( t \right)\mathbb{C} 上の一変数有理関数体とする.a複素数とし,s=t^ 3 +3t^ 2 +at \in \mathbb{C} \left( t \right) とおく.\mathbb{C}s で生成された \mathbb{C} \left( t \right) の部分体を \mathbb{C} \left( s \right) とするとき,以下の問に答えよ.

(1)拡大次数 \left[ \mathbb{C} \left( t \right) : \mathbb{C} \left( s \right) \right] を求めよ.

(2)\mathbb{C} \left( t \right) / \mathbb{C} \left( s \right)ガロア拡大となる複素数 a をすべて求めよ.

 有理関数体上の拡大についての問題です.そんなに難しくないです.

 以下,解答.

 

(1)

 f \left( x \right) = x^ 3 +3x^ 2 + ax - s \in \mathbb{C} \left( s \right) \left[ x \right] とすると f \left( t \right) = 0 である.この f \left( x \right)\mathbb{C} \left( s \right) 上既約であることを示す.ところで \mathbb{C} \left( s \right)\mathbb{C} \left[ s \right] の商体であって \mathbb{C} \left[ s \right] は体 \mathbb{C} 上の一変数多項式環であることより特に \mathrm{UFD} であるから,そのためには \mathbb{C} \left[ s \right] 上で既約であることを示せばよい.また s\mathbb{C} 上超越的なので \mathbb{C} \left[ s \right] \cong \mathbb{C} \left[ y \right] が成り立つ.ここで yx とは独立な変数である.よって x^ 3 + 3x^ 2 + ax - y\mathbb{C} \left[ y \right] 上既約であることを示せばよい.

 f \left( x \right) = x^ 3 +3x^ 2 + ax - y \in \mathbb{C} \left[ y \right] \left[ x \right] \mathbb{C} \left[ x,y \right] の元 f \left( x,y \right) とみる.それをさらに \mathbb{C} \left[ x \right] \left[ y \right] の元 f \left( y \right) とみると,f \left( x \right)\mathbb{C} \left[ y \right] 上既約であることと f \left( y \right)\mathbb{C} \left[ x \right] 上既約であることは同値である.そして f \left( y \right)\mathbb{C} \left[ x \right] 係数の一次式なので特に既約である.よって拡大次数 \left[ \mathbb{C} \left( t \right) : \mathbb{C} \left( s \right) \right]3 となる.

\Box

(2)

f \left( x \right) = \left( x-t \right) \left\{ x^ 2 + \left( t+3 \right) x + t^ 2 +3t +a \right\}

 \mathbb{Q} \subset \mathbb{C} \left( t \right) より \mathbb{C} \left( t \right) / \mathbb{C} \left( s \right) が分離拡大であることはよいので,これが正規拡大となるような複素数 a の条件を考える.

\displaystyle f \left( x \right) = 0 \Leftrightarrow x=t , \frac{ - \left( t+3 \right) \pm \sqrt{ -3t^ 2 -6t + \left( 9-4a \right) } }{2}

なので \mathbb{C} \left( t \right) / \mathbb{C} \left( s \right) が正規拡大であるためには \sqrt{ 3t^ 2 +6t + \left( 4a-9 \right) } \in \mathbb{C} \left( t \right) が必要十分である.そのような複素数 a3 しかない.

\Box

 

 本当にこれでちゃんと解けたことになってるんでしょうかね.院試にしては簡単すぎるというか,あっさりしすぎていて自分が間違えているんじゃないかという気しかしません(実際な).

 有理関数体上の拡大について知っておくと有益な定理として Lüroth の定理があります.

Lüroth’s theorem K とその一変数有理関数体 K \left( X \right) の任意の中間体 M \: \left( \neq K \right) は単拡大である.すなわち F \left( X \right) \in K \left( X \right) を用いて M = K \left( F \left( X \right) \right) と表され, F \left( X \right) を互いに素な K \left[ X \right] の元 f \left( X \right) , g \left( X \right) を用いて \displaystyle F \left( X \right) = \frac{ f \left( X \right) }{ g \left( X \right) } とかけるなら
\left[ K \left( X \right) : L \right] = \mathrm{max} \left\{ \mathrm{deg} f \left( X \right) , \mathrm{deg} g \left( X \right) \right\}
が成り立つ.

 これを使えば今回問われている拡大次数が 3 になることはすぐに分かります(さすがにこの問題でこの定理を持ち出すのはよくない気がしますが).

 ちなみにこの問題が出題された年度からみて七年前の院試に,次のような問題が出題されています.

 

平成20年度 京都大学大学院理学研究所 数学・数理解析専攻 大問2 t不定元とし複素数体上の有理関数体 K = \mathbb{C} \left( t \right) を考える.複素数 p,q \in \mathbb{C} をとり L = \mathbb{C} \left( t^ 3 + pt + q \right) とおくとき,K/L は代数拡大であることを示し,さらに K/L の Galois 閉包( K を含む最小の L 上の Galois 拡大体)とその L 上の拡大次数を求めよ.

 p=3 , q=a の場合が今回の問題ですね.こっちはまだ解いていないので正確な答えは分からないんですが,これが代数拡大であることはさっきの問題と同じようにやればよさそうで,Galois 閉包は \mathbb{C} \left( t \right) か,あるいはこれにさっきの問題でいうところの根号の部分を添加した体になるんですかね.p,q の組によっては最初の拡大が正規にはならないので.

 

 二問目.

 

平成26年度 京都大学大学院理学研究所 数学・数理解析専攻 大問2 K \subset \mathbb{C} を部分体,p素数とする.\mathbb{C} に含まれる任意の有限次拡大 L/K に対し,L=K でなければ \left[ L:K \right]p で割り切れると仮定する.このとき,\mathbb{C} に含まれる任意の有限次拡大 L/K に対し,\left[ L:K \right]p のべき( 1 を含む)であることを証明せよ.

 パッと見はかなり抽象的な問題ですが,少し考えてみれば証明の大まかな方針はすぐに立ちます.というのもたとえば \left[ L:K \right] = p^ n m とかける有限次拡大 L/K があったとして,その中間体なんかを持ってくると p の指数は小さくなり,かつ m の素因数は残るので,このままいけば何となく降下法チックに証明できるんじゃないかという感じがします.実際にはそんなことをしなくても直接証明できてしまうわけですが,やることは大体同じでとりあえず中間体を持ってこようという方針で進めます.

 以下,解答.

 

 拡大次数が p べきでないような有限次拡大が存在すると仮定する.すなわち\mathbb{C} に含まれる有限次拡大 L/K\left[ L:K \right] = p^ n m を満たすと仮定する.ここで a は正の整数,mp と互いに素な 2 以上の整数とする.いま L/K は有限次分離拡大なので,ある \alpha \in L を用いて L = K \left( \alpha \right) とかける.また \alphaK 上共役な元は高々有限個しかないので,それらすべてを K に添加した体を L^ {\prime} とおくと L^ {\prime} /K は有限次 Galois 拡大になり,その拡大次数は p で割り切れない約数を持つ.よって初めから L/K が有限次 Galois 拡大であると仮定しておいてよい.

 Sylow の定理より,部分群 G \subset \mathrm{Gal} \left( L/K \right) であって \left| G \right| = p^ n となるものが存在する.この G に対応する L/K の中間体を M とすると \left[ L:M \right] = \left| G \right| = p^ n となり,したがって \left[ M : K \right] = m である.しかし mp と互いに素な 2 以上の整数だったから,これは問題文の仮定に矛盾である.

\Box

 

 体の有限次拡大が中間体を持つかどうかは一般には分かりませんが,Galois 拡大を考えればその Galois 群の形を調べることで中間体を持ってくることができる場合があります. Sylow の定理は強い.

 

 

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 それはそうとして、昨日、ストレイライトの新曲が公開されたので全人類再生してください(ダイマ)。