院試問題解くやつ2

 そろそろ院試勉強しなきゃなあと思いながらこの夏を過ごしているのですけれど、割とだらだらしてしまっているので tex の練習(未だに tex を全く使えない)も兼ねて(主に)京大理学研(数理解析)の入試問題をブログで解いていこうと思います(不定期)。解答が公表されているわけではないので(だから困っているんだが)、誤答等も多々あると思われますが、その際はよければ僕の方まで連絡してください(マジで頼む)。

 ここまでテンプレです。

 

平成29年度 京都大学大学院理学研究所 数学・数理解析専攻 大問3 (i)S _ 5 を文字 1,2,3,4,5 に関する対称群とする.S _ 3 を文字 1,2,3 に関する対称群とし,S _ 3S _ 5 の部分群とみなす.\sigma = \left( 1 \; 2 \; 3 \right) \in S _ 5 を長さ 3 の巡回置換とし,\sigma で生成された S _ 5 の部分群を G = \langle \sigma \rangle とおく.\tau = \left( 4 \; 5 \right) \in S _ 5 を互換とし,\tau で生成された S _ 5 の部分群を H = \langle \tau \rangle とおく.S _ 5 の部分群 G の正規化群を
N _ {S _ 5} \left( G \right) = \left\{ \: \eta \in S _ 5 \left| \: \right. \eta G \eta ^ {-1} = G \right\}
で定める.このとき,N _ {S _ 5} \left( G \right) = S _ 3 \times H であることを示せ.

(ii)f \left( X \right)\mathbb{Q} 係数の 5 次の多項式とする.K \subset \mathbb{C}f \left( X \right)\mathbb{Q} 上の最小分解体とする.K は次の条件(*)を満たすとする.

(*)\left[ K : F \right] = 3 となる K の部分体 F がただ一つ存在する.

このとき,f \left( X \right)\mathbb{Q} 係数の 3 次の既約多項式で割り切れることを示せ.

(i)は手を動かすだけなので問題は(ii)ですが,あからさまな誘導があるために取っつきやすそうな雰囲気を醸し出しているくせに,実際のところ何をすればいいのかがあんまり見えてこない問題です(少なくとも自分はそうでした).(*)は \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) が位数 3 の部分群を一つだけ持つという条件に言い換えられ,\mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) はそもそも S _ 5 の部分群なので,そのような厳しい条件を満たすものはそれほど多くないだろうという予想がつきます.なので力尽くで押し切れば解けそうだという感じはするのですが……,どうなんでしょう?

 以下,解答.

 

(i)

 \eta \in S _ 514 へ動かすとする.ここで \eta \in N _ {S _ 5} \left( G \right) なら \alpha , \beta \in G があって \eta \alpha \eta ^ {-1} = \beta とかける.\beta \left( 4 \right) = 4 だから \eta \alpha \eta ^ {-1} \left( 4 \right) = 4 となり \eta ^ {-1} \left( 4 \right) = 1 なので \eta \alpha \left( 1 \right) = 4 である.ところが \eta \left( 1 \right) = 4 よりこれが成り立つためには \alpha \left( 1 \right) = 1 が必要である.G の元で 11 へ移すものは単位元 e しかない.よって \alpha = e であり,このとき \beta = e でもあるのでこれは矛盾.従って \eta \notin N _ {S _ 5} \left( G \right) である.

 同様にして,1,2,3 のいずれかを 4,5 のいずれかに移すような S _ 5 の元は N _ {S _ 5} \left( G \right) に含まれないことが分かる.ゆえに \eta \in S _ 5 なら x \in S _ 3 , y \in H を用いて \eta = xy と分解できる.逆にこの形で表される S _ 5 の元がすべて N _ {S _ 5} \left( G \right) に含まれることは容易に分かる.

 \left| N _ {S _ 5} \left( G \right) \right| = 2 \left| S _ 3 \right| より S _ 3N _ {S _ 5} \left( G \right)正規部分群であり,H もまた N _ {S _ 5} \left( G \right)正規部分群であることは直接確かめられる.さらに S _ 3 \cap H = \left\{ e \right\} かつ N _ {S _ 5} \left( G \right) = S _ 3 H だから,N _ {S _ 5} \left( G \right) \cong S _ 3 \times H である.

\Box

(ii)

 K/ \mathbb{Q} は Galois 拡大なので \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) の部分群と K/ \mathbb{Q} の中間体が一対一に対応する.よって条件(*)は次のように言い換えられる.

(*)\mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) の部分群で位数 3 のものがただ一つ存在する.

 \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right)f \left( X \right)5 つの根に対する置換を定めるので S _ 5 の部分群とみなすことができる.必要であれば順番を入れ替えて,条件(*)を満たす部分群として G を選んでよい.

 \sigma \in \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right)14 へ動かすとする.\sigma \left( 1 \; 2 \; 3 \right) \sigma ^ {-1} は三次巡回置換で \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) の元だから G に含まれる.しかし \sigma \left( 1 \; 2 \; 3 \right) \sigma ^ {-1} \left( 4 \right) = \sigma \left( 2 \right) であって G の元は 4 を動かさないので \sigma \left( 2 \right) = 4 となり,これは \sigma単射性に反する.よって \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) の元は 1,2,31,2,3 のいずれかに移し,4,54,5 のいずれかに移すことが分かる.そのような S _ 5 の元は N _ { S _ 5 } \left( G \right) ですべてである.ゆえに \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) \subset N _ {S _ 5} \left( G \right) である.(i)の結果から \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) S _ 3 \times H の部分群に同型で,S _ 3 \times H の部分群は(同型を除いて)以下の通り.

  位数 1\left\{ e \right\}

  位数 2C _ 2

  位数 3 C _ 3

  位数 4C _ 2 \times C _ 2

  位数 6S _ 3 , \: C _ 3 \times C _ 2

  位数 12S _ 3 \times C _ 2

 \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) \cong C _ 3 のときに主張が成立することは明らか.

 \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right)S _ 3 , \: C _ 3 \times C _ 2 , \: S _ 3 \times C _ 2 のいずれかに同型であるならば,\left[ M _ 1 / \mathbb{Q} \right] = 2 ,  \left[ M _ 2 / \mathbb{Q} \right] = 3 となる中間体 M _ 1 , M _ 2 が存在する.仮定より f \left( X \right)\mathbb{Q} 上で一次式の積に分解することはないので f \left( \alpha \right) = 0 かつ \alpha \notin \mathbb{Q} を満たす \alpha \in \mathbb{C} が存在する.\alpha\mathbb{Q} 上の最小多項式g \left( X \right) とすると g \left( X \right)f \left( X \right) を割り切る.よって拡大 \mathbb{Q} \left( \alpha \right) / \mathbb{Q} の拡大次数は 2 以上 5 以下.さらに \mathbb{Q} \left( \alpha \right)K/ \mathbb{Q} の中間体なので \mathbb{Q} 上の拡大次数が 5 となることはない.あとはこれが 4 でないことを示せば \mathbb{Q} \left( \alpha \right)M _ 1M _ 2 かに一致するので(ii)の主張が従う( g \left( X \right)\mathbb{Q} 係数の既約多項式).

 もし \mathbb{Q} \left( \alpha \right) / \mathbb{Q} の拡大次数が 4 なら,f \left( X \right) の根 \beta であって任意の \sigma \in \mathrm{Gal} \left( K / \mathbb{Q} \right) で不変なものがただ一つだけ存在することになるが,これは明らかに矛盾である.

\Box

 

 K/ \mathbb{Q}ガロア群が(i)で求めた同型の部分群になるのだろうなあという予想が『 f \left( X \right) は既約三次式で割り切れる』という条件から立つので,それをうまく使えるように議論を運んでいく感じです.と言いつつも,この問題については正確な議論をしているという自信があまりないです…….マズってるところを見つけた人がいたら教えてください.

 

 続いて二問目(一つの記事で二題解くのがテンプレになりそう).

 

平成28年度 京都大学大学院理学研究所 数学・数理解析専攻 大問1 有理数係数の既約多項式 f \left( x \right) = x^ 3 + ax + b を考え,K \subset \mathbb{C}f \left( x \right) の最小分解体とする.a \gt 0 のとき, K/ \mathbb{Q} のGalois 群が 3 次対称群と同型であることを示せ.

 さっきの問題に比べるとかなり易しめな気がします.有理数係数の三次式に関する最小分解体が三次対称群に同型ということは,恐らく実数解を一つ,実数でない解を二つずつ持つのだろうなあという予想ができ,実際にそうであることが a \gt 0 という条件から確かめられます.

 以下,解答.

 

 f^ {\prime} \left( x \right) = 3 x^ 2 + a \gt 0 より f \left( x \right) の根として \alpha , \beta , \overline{ \beta } がとれる.ただし \alpha \in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} かつ  \beta \in \mathbb{C} \backslash \mathbb{R} とし,\overline{ \beta }\beta の共役複素数を表すものとする.このとき K = \mathbb{Q} \left( \alpha , \beta \right) とかける.

 体の拡大 \mathbb{Q} \left( \alpha \right) / \mathbb{Q} を考える.この拡大の拡大次数は 3 である.解と係数の関係から \alpha + \beta + \overline{ \beta } = 0, \alpha \beta \overline{ \beta } = - b なので \beta + \overline{ \beta } , \beta \overline{ \beta } \in \mathbb{Q} \left( \alpha \right) である.\mathbb{Q} \left( \alpha \right) \subset \mathbb{R} より \beta \notin \mathbb{Q} \left( \alpha \right) であって \beta\mathbb{Q} \left( \alpha \right) 上の最小多項式\displaystyle \frac{f \left( x \right)}{x - \alpha } だから,拡大 \mathbb{Q} \left( \alpha , \beta \right) / \mathbb{Q} \left( \alpha \right) の拡大次数は 2 となる.\overline{ \beta } = - \alpha - \beta \in \mathbb{Q} \left( \alpha , \beta \right) なので K = \mathbb{Q} \left( \alpha , \beta \right) となり,これより Galois 拡大 K/ \mathbb{Q} の拡大次数は 6 である.以上より K/ \mathbb{Q} の Galois 群は位数 6 であるが,位数 6 の群は同型を除いて六次巡回群 C _ 6 と三次対称群 S _ 3 しか存在しない.よって主張を示すには K/ \mathbb{Q} の Galois 群が非可換群であることを示せば十分である.

 K/ \mathbb{Q} が Galois 拡大であるから K/ \mathbb{Q} \left( \alpha \right) も Galois 拡大である.\beta\overline{ \beta }\mathbb{Q} \left( \alpha \right) 上共役なので, \sigma \in \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \left( \alpha \right) \right) であって \sigma \left( \beta \right) = \overline{ \beta } となるものが存在する.また同様に  \tau \in \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) であって \tau \left( \alpha \right) = \beta を満たすものが存在する.ここで \sigma\mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) の元でもあって \sigma \left( \alpha \right) = \alpha を満たすことに注意すると,\sigma \tau \left( \alpha \right) = \overline{ \beta } かつ \tau \sigma \left( \alpha \right) = \beta であることから \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) は非可換群である.

\Box

 

 もう一つの拡大 \mathbb{Q} \left( \beta \right) を考えて \tau \in \mathrm{Gal} \left( K/ \mathbb{Q} \right) を構成するのもアリのような気がします.