黒、赤、黄、緑、紫。

 

 高速道路が好きなんだ。昔からずっと。どうしてかは分からないけれど、とにかく好きだった。橙と白に包まれたトンネル。等間隔の黄色に照らされた夜空。防音壁の向こうに薄ぼんやりと見える風景。あるいは、単に夜景。そういうのが大好きだった。

 

 ついさっき高速道路を使って京都へ戻ってきたのだけれど、その途中で、この理由が何となく分かったような気がした。

 

 多分、人が誰もいないからだ。僕は運転免許を持っていないので、車内にはもちろん家族がいるわけだが、そうじゃなくて、外の話。たまに街中を突っ切っているものもあるが、高速道路は往々にして高架上に建設されるので、そりゃあ人なんているはずがない。車がびゅんびゅんと行き交ってはいるが、しかし、僕はそれを『人』だとは認識しない。車が動いている、としか思わない。だから、高速道路を走っている間は、基本的に人がいない環境にいられるわけだ。

 そんな世界の綺麗さに惹かれているんだと思う、自分は。自然と人工の対比とかではなくて、単に人間が消えた世界というものの輝きみたいなものに思いを馳せているのだと思う。

 なんだか、そう考えると、分かりやすい。一貫性みたいなものを感じる。幻想かもしれないけれど、まあそれでもいい。

 

 で、さっき思ったんだ。

 

 無人の高速道路を歩いてみたい。

 

 って。

 

 遠くの黒に浮かび上がった街灯り、赤の光を微かに放つ鉄塔、上下に交差した道路によって黄が飽和した場所、よく知らない街の名前が並べられた緑の案内板、「ETC限定」とだけ書かれた紫の電光板。ゆっくりと歩きながら、彼らの息遣いを感じてみたい。そんな世界に溺れてみたい。

 

 そう思った。

 無理なんだけどさ。

 でも、それでいいんだよ。

 きっと、綺麗なものへは手の届かない方がいい。