不明

 

 生まれてこの方、何かに真剣になったことが一度もない。いや、もしかすると一度くらいはあったかもしれないけれど、それでも高々数えられる程度だ。誤差みたいなものだ。

 昔からずっと不思議だった。たとえばクラブ活動、たとえば夏休みの課題、たとえばテスト勉強――みんなどうしてそんなに真面目になれるんだろうか、とずっと思っていた。達成感が何だとか言われてもまるでピンとこない。その達成感とやらは、必死に努力して、泣きそうになるほど自分を追い込んで、他にやりたいことも脇に置いて、そこまでして目指す価値のあるものなのか。中学生の僕には彼らの思考がまるで理解できなかった。そして、いまもよく分かっていない。

 そんなことを高校生の頃に考えたことがあって、自分は恐らく失敗するのが怖いんだろうな、という結論に至った。必死に努力して、それで裏切られたときが怖いから、だから「面倒くさい」という言い訳を盾にして、逃げ続けていた。

 絵を描くことも、歌を唄うことも、曲を作ることも、もちろん数学も、まるで上達しない理由なんて自明も自明で、一度として真剣に取り組んだことがないからだ。こんなのはもう何億年も前から分かりきっていたことで、いまさら言ってどうこうなることではないし、分かってんなら今からでも真剣にやれよと言われるだろうけれど、でも、怖いものは怖いのでどうせやらないんだろうなと思う。成功の保証されていない賭けに出るのはかなりの勇気を要する。万人に出来ることではない。

 

 

 いやいやいやいや。なに悟った風なこと言ってんだよ。ふざけんのも大概にしろよ。お前いつもTwitter麻倉ももさんの名前を連呼しているけど、それで結局何をした? 齊藤真知子さんは? 去年の冬かそこらくらいに内田真礼のオタクになった知り合いはアニサマ行ったりバースデーライブ行ったり色々してたぞ。他にも何かよく分からんアニメ系ライブにも行ってたけど――で、お前は? 何をしたんだよ? 何もしてねえだろ。写真集買ったくらいじゃねえか。しかも大して読んでないし、結局上っ面だけで何も行動に移せてねえじゃねえかよ。トラセのツアー誘われた時も断っただろお前。本当に好きなら喜んで行ってこいよ。それを何断ってんだよ、馬鹿か? そんなに外へ出るのが嫌ならラジオ番組にメッセージの一つでも送ったらどうだよ。ああ、でも無理だよな。だってお前ラジオ聴いてねえし。お前の言う『好き』はその程度のもんってことなんだよ。薄っぺらくて、中身が無くて、見え透いてるんだよ。春川魔姫さんも、霧矢あおいさんも、霧切響子さんも、大崎甜花さんも、すぐに飽きてんじゃねえかお前。たかがその程度の感情を好きだとか形容してんじゃねえぞ。絵描きも歌も作曲も数学も同じだろ。真剣になれない時点で、お前はそれが好きじゃねえんだよ。分かったらさっさと黙って寝ろ。そうやって一生自分の性格を呪いながら死ね。

 

 

生まれてこの方、何かに真剣になったことが一度もない。僕は本気でそう思っている。それは僕自身が誰よりもよく知っているし、分かっている。そして、それはつまり、本気で何かを好きになったことがないということだ。

だから、時々考える。

初めて彼女に『好き』だと言ったあの日――僕は本当に彼女のことが好きだったのだろうか?

これを考え始めると、本当に死にたくなってくる。あの感情までも偽物なのだとしたら、いよいよ生きている意味がなくなってしまうから――死んでしまった方がずっとマシだから。

と。

あの日からずっと、心のどこかでこんなことを考えている――麻倉ももさんにせよ、齊藤真知子さんにせよ、もちろんその好意を穴埋めだと思ったことは決してないけれど。

オタクになりきれない自分を見ていると。

オタクらしい周りの人たちを見ていると。

どうしてもそんなことを考えてしまう。

 

というだけの自分語り。